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『債権改正法(その8) VOL299

 現在国会に提出されている「民法を改正する法律案」のうち、今回は「債務引受」についてご紹介します。
 債務引受とは、他人の債務を他人から引受人に移転することです。債権譲渡は「債権」の移転、債務引受は「債務」の移転として表裏一体の関係にあります。経済的には、引受人が他人の債務を履行する点で、債務引受は保証と同様の機能を果たすことになります。
 現行民法には債務引受に関する規定はありません。
 しかし、企業や営業を譲渡する場合、契約上の地位を移転する場合、担保の設定された物件を被担保債務と一緒に譲渡する場合等において、債務引受の必要性があります。そこで、判例・学説は従前から債務引受が有効であることを認めています。法案は、債務引受の実際上の必要性を踏まえ、これを明文で規定することにしました。
 ところで、債務引受には、いわゆる「免責的債務引受」と「併存的債務引受」があり、法案ではこれらを別々に規定しています。
 すなわち、法案では、免責的債務引受について、引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れると規定されています。従って、免責的債務引受契約は、通常、債権者、債務者及び引受人の3当事者の合意により成立することになります。
 また、法案によれば、免責的債務引受契約は、債権者と引受人の合意によっても成立させることができます。
 ただし、その効力は、債権者が債務者に対して契約の成立を通知したときから生じるものとされています。
 なお、免責的債務引受契約を、債務者と引受人の合意によって成立させるためには、債権者の承諾が必要となります。
 免責的債務引受の引受人は、他人の債務を自己の債務として他人に免責を与えた上で引き受けるので、引受人は債務者に対して求償権を取得しません。ただし、引受人は、債務者が主張できた抗弁をもって債権者に対抗することができます。債務者が債権者に対し取消権や解除権を有するときも、引受人は、これらの権利の行使によって債務者が債務を免れることができた限度で債務の履行を拒むことができます。
 次に、併存的債務引受について、法案では、引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担すると規定されています。つまり、債務者と引受人は連帯債務者になる訳です。従って、併存的債務引受契約も、通常は、債権者、債務者及び引受人の3当事者の合意により成立させることになります。
 もっとも、法案によれば、併存的債務引受契約は、債権者と引受人の合意によっても成立させることができます。この場合、債務者の地位には特段の影響がないことから、債務者への通知や承諾は必要なく、債務者の意思に反しても契約は成立すると解されています。
 なお、併存的債務引受契約を、債務者と引受人の合意によって成立させる場合は、債権者の承諾が必要となります。
 併存的債務引受においても、引受人は債務者の抗弁権、取消権及び解除権を利用することが可能です。以上

(2015.08)

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