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「会社法の委員会とは」VOL308

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の退任表明が大きく報道されています。会長側の社長交代人事案が、同社で新しく設置された指名・報酬委員会の社外取締役から賛成を得られず、取締役会でも否決されたため、責任を取られたとのことです。
 一企業の人事問題ではありますが、同社は上場企業として公的責任がありますし、鈴木会長といえば、我が国のコンビニを育て上げた立志伝中の人物です。加えて、指名・報酬委員会や社外取締役等の企業統治に関わる新しい組織と創業家も巻き込んだ古くからの人間関係が絡み合い、同氏の辞任は世間の耳目を集めています。
 そこで、今回は、会社法上の委員会制度についてご説明したいと思います。
 まず「委員会設置会社」とは平成14年改正商法により導入された「委員会」を機関形態として持つ会社のことです。アメリカ型のモニタリング・モデルをベースにしたものと言われています。会社の業務執行権限は、取締役会によって選任された執行役に与えられ、取締役会は、社外取締役が過半数を占める指名・監査・報酬の3つの委員会を通じて執行役の業務執行を監督(モニタリング)する仕組みです。
 当時の商法特例法上の大会社(みなし大会社を含む)は、従来型の監査役会設置会社と委員会設置会社のいずれかを選択できました。しかし、我が国では、伝統的に取締役会が業務執行の中心であったことから、アメリカ型の委員会はあまり利用されてきませんでした。海外の機関投資家からは、我が国の監査役(会)設置会社では、監査役に取締役会での議決権がなく、代表取締役の選任・解職権もないため、監督機能が不十分という批判がなされていたところです。
 そこで、平成26年改正会社法は、新たに「監査等委員会設置会社」を創設しました。
 取締役3名以上(過半数は社外取締役)から成る監査等委員会が、取締役の業務執行を監査・監督する仕組みとなります。取締役会の内部に監査等委員会が設置され、監査役(会)が行っていた取締役会に対する監査・監督機能を担うことになります。この制度の導入により、従前の委員会設置会社は、会社法上「指名委員会等設置会社」と名称が変更されることになりました。
 ところで、冒頭でご紹介したセブン&アイ・ホールディングスの指名・報酬委員会とは、上記の監査等委員会とも指名等委員会とも異なります。
 同社の委員会は、社外取締役2名と社内取締役2名(プラス、社外監査役1名と社内監査役がオブザーバー参加)から成り、グループ会社の役員候補の選任や報酬の決定に際して、取締役会の諮問機関の役割を担うのです。
 近年、同社のような監査役(会)設置会社において、諮問機関型の委員会の導入が流行しています。ガバナンス強化の観点から注目されていますが、取締役会の諮問機関に過ぎない点、社外取締役が過半数ではない点等において、会社法の委員会とは異なる組織であることは留意しなければなりません。
 とはいえ、諮問機関に過ぎないはずの同社の委員会において、社外取締役2名が会長側人事案に反対したところ、取締役会での否決に繋がったと言われています。社外取締役の人選にもよるでしょうが、案外、意義深い組織なのかもしれません。以上

(2016.05)

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