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「労働時間規制(その4)」

 今回は、3月18日に長野県松本市で開催された、地域司法と労働審判に関するシンポジウムをご紹介したいと思います。このシンポジウムは、長野地方裁判所松本支部において、4月1日から労働審判が実施されることを踏まえ、長野県弁護士会と日本弁護士連合会の共催で開催されたものです。
 松本市といえば、大河ドラマの真田家ゆかりの土地で、美しい松本城が有名ですが、そこでなぜ労働審判?と、いまひとつピンとこない方も多いと思います。
 しかし、労働時間規制との関係でいえば、近年、残業代請求訴訟が全国的にブームになっているのは、この労働審判制度の導入が背景にあるのです。
 そもそも、労働審判とは、労働者と雇用主の間の解雇、未払い残業代、パワハラ・セクハラ等を巡って発生するトラブルを解決するため、平成18年から導入された比較的新しい裁判所の手続です。
 労働審判では、裁判官1名と労働関係の専門家である労働審判員2名(労使各1名ずつ)の合計3名で構成される労働審判委員会が、労使双方の言い分を聞きながら、話し合いによる解決(調停)を目指し、調停が成立しない場合には審判を行って結論を出します。
 労働審判と通常裁判を比べてみると、まず、労働審判の申立費用(印紙代)は訴訟費用の半額です。
 また、労働審判では、法律上の厳密な議論をするより、話し合いによる柔軟な解決を目指すので、当事者である市民にとって利用し易い手続といえます。さらに、労働審判は、原則として3回の期日(申立後約3〜4か月)で結論(調停又は審判)に至るので、裁判よりも短期間で紛争解決に至ります。もちろん、労働審判委員会が出した結論(審判)に納得できなければ、異議申し立てにより、通常訴訟で争うことも可能です。
 実務上、労働審判制度の評価は高く、全国の申し立て件数でみると、平成18年に877件でスタートしてから、平成21年に3500件を超え、その後も概ね毎年3500件程度で推移しています。 
 しかしながら、労働審判が専門的な紛争解決手続であることから、原則として裁判所本庁で実施されています(支部で実施されていたのは、従前、東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部のみ)。そのため、労働審判の実施支部拡大を目指す運動が全国各地で展開されているのです。
 地方の要望を集約した日弁連と司法行政のトップである最高裁が、平成26年9月から協議を重ねた結果、従前の2支部に加え、長野地裁松本支部、静岡地裁浜松支部及び広島地裁福山支部の3支部において、平成29年4月から労働審判を実施することになりました。協議では、予想される事件数、本庁と支部との距離等に加え、地元の熱意が考慮されたようです。
 冒頭でご紹介した松本市のシンポジウムでは、参加した市民に分かりやすい制度説明がなされた上、地元の方々が如何に松本支部での労働審判の実施を望み、実現に向けて努力してきたかが語られました。東京で暮らす我々が忘れかけた地元愛を感じられるシンポジウムだったと思います。以上

(2017.05)

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