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「労働時間規制(その5)」

 政府の「働き方改革実現会議」は3月28日に「働き方改革実行計画」を決定し、合計10回約6か月間にわたる議論を終えました。
 実現会議は、首相が議長を務め、産業界と労働界のトップも加わって設置されたものでした。そこでは、主として…校間労働の是正及び同一労働同一賃金の実現等を図るための法改正の方向性が議論されました。
 …校間労働の是正に関しては、以前ご紹介した通り、労使合意を経て「政労使」による提案がなされ、同一労働同一賃金については、ガイドライン案が提示されました。実現会議でまとめられた実行計画には、政労使の提案とガイドライン案が添付されています。
 実行計画は、労使双方に対してその尊重を求めた上で「労働政策審議会において当実行計画を前提にスピード感を持って審議を行い、政府は関連法律案等を早期に国会に提出することが求められる。スピードと実行が重要である」と、具体的な立案過程を示しつつ、繰り返し「早くやれ!」と強調しています。
 特に、労働政策審議会に対しては「なかでも罰則付きの時間外労働の上限規制については、これまで長年、労働政策審議会で議論されてきたものの、結論を得ることができなかった」と厳しく批判した上で「労働基準法70年の歴史の中で歴史的な大改革である。今般、労働界と産業界が合意できたことは画期的なことであり、いまこそ政労使が、必ずやり遂げるという強い意思を持って法制化に取り組んでいかなければならない」と、法制化が必達目標であると結んでいます。リダンダント(重複)の多い文章ではありますが、労働政策審議会での消極意見を押さえ込むような勢いを感じます。確かに、この審議会が労働時間規制の重要性にもっと配慮した議論をしていたならば、電通過労死事件は防げていたのかもしれません。
 実行計画には、念を入れて「工程表」まで添付されています。長時間労働の規制に関する工程表によると、現在提出中の労働基準法改正案の早期成立を図ると共に、2018年度までに実行計画に基づく労働基準法改正案を国会に提出することになっています。
 ところが、工程表では2018年度から2027年度までが矢印化してあり、そこでは「施行準備・周知徹底期間をとった上で段階的に施行・施行後5年を経過した後適当な時期において、見直しを行う」と記載されていました。実行計画の本文の熱い思いとは真逆のユルユルな方針と言わざるを得ません。
 世の中の実態を踏まえながら制度を広めていく必要があることは確かですが、成る程、こういう所に規制を骨抜きにする仕組みが埋め込まれているのだなと、妙に感心した次第です。
 しかしながら、そうすると、ここ数年間は、従前の天井知らずの残業制度が残ることになりそうです。
 これに対して、前回ご紹介した労働審判を利用した残業代請求事件は、違法な長時間労働に対する有力な抑止力になると思います。特に、自前の解決システム(内部統制や労働組合等)を持たない中小企業において労働審判の利用率が高いといわれています。以上

(2017.06)

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