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「2018年の課題」

 2018(平成30)年を迎え、皆様のご健康とご多幸を祈念致します。
 昨年は「電通事件」や「働き方改革」の影響で、長時間労働規制を巡り、様々な問題が発生しました。長時間労働が常態化している企業や業界に対する社会の見方も格段に厳しくなっています。
 厚生労働省では労基法違反企業を同省HPで公表していますし、民間でも「ブラック企業大賞」が毎年注目されています。既に宅配業界では大幅値上げが起きていますが、高騰する残業代や人手不足から生じる人件費増を転嫁するため、今年は多くの企業や業界が価額の値上げに踏み切ることになりそうです。
また、今年は「働き方改革」の成果である労働基準法改正案が国会に提出される見込みです。本来は昨年秋の臨時国会に提出される予定でしたが、衆議院解散により今年にずれ込みました。
 労基法改正案は「長時間労働規制」と「高度プロフェッショナル制度」を大きな柱としています。
 労働者側は、概ね前者に賛成、後者に反対と思われます。ただし、後者については、連合の執行部が一旦は政府と妥協した経緯もあり、どこまで反対するのか真意は不明です。
 使用者側は、今の社会情勢を踏まえれば前者に反対するのは難しいので、これとセットで後者を取れればよいと考えている節があります。将来、アメリカ流の「ホワ イトカラー・エグゼンプション」を導入する布石となる訳です。
 そもそも長時間労働規制については、電通事件の反省と総括の意味合いがあり、当然成立させるべき筋合いです。しかし、これとセットで「高度プロフェッショナル制度」もといわれると、いささか違和感があります。この制度自体の功罪をもう少し慎重に議論する必要があるからです。
 ところで、衆議院解散といえば、昨年10月の総選挙で小池人気にあやかろうとした野党側が自滅し、再び与党が衆議院で3分の2以上の多数を占めることになりました。この勝利によって、安倍首相の続投が決まり、今年はいよいよ政権の総決算としての憲法改正に向けた活動が活発化すると予想されます。
ただ、現時点で、政府与党が憲法のどの条項をどのように改正するのか定かではありません。また、戦後70年以上現行憲法下に暮らしてきた国民が、初めての国民投票で、どこまで改正に賛成するか予想はつきません。
 しかし、政府与党は、かつて内閣法制局長官を更迭して従前の憲法解釈を変えたように、内閣の人事権を利用して憲法問題を打開する手法をとってきました。
憲法の番人といわれる最高裁判所でも、昨年、1票の格差最大3.08倍の一昨年7月の参議院議員選挙に合憲のお墨付きを与え、政府与党に恭順の意を示した結果(?)、懸案だった新年1月の長官人事については、合憲意見に与した本命候補が無事内定を得ました。
 他方、憲法改正に反対し、政府与党の意向を忖度しない日本弁護士連合会(日弁連)に対しては、昨年、日弁連が長年保持してきた最高裁裁判官の枠を一つ取りあげ、また、新しい後任者選びでも、本命候補は外されると噂されています。
 憲法改正はわが国の将来にとって大きな問題ですが、それと共に、権力を利用して個人や組織を懐柔したり威嚇したりするやり方について国民がどう評価するかも、今年の課題と言えそうです。以上
 

(2018.01)

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