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『裁判官の任命について(その4)』

 わが国では、法曹希望者が司法試験に合格し、司法研修所での研修を終えると、裁判官、検察官、弁護士のいずれか一つの職業を選択します。現在の司法修習生は1期1500人~2000人ですが、そのうち100名前後が裁判官を選択します。ただし、裁判官になるためには司法研修所での成績が優秀でなければなりません。また、3年に1度の転勤生活に順応できる耐久力も必要です。
 この新卒ルート(キャリア・システムと呼ばれています。)のほかに、弁護士を経由してから裁判官になるルートがあります。これを「弁護士任官」ということは以前にもご紹介しました。
 アメリカでは弁護士任官が一般的です。州ごとに若干制度が異なるものの、概ね、弁護士経験を長年積んだ者の中から裁判官や検察官が選任されています。我が国ではこの制度のことを「法曹一元」と呼んでいます。
 ヨーロッパではキャリア・システムが一般的ですが、一部の国では、判事補の養成期間と費用を短縮できるメリットから、キャリア裁判官と併せて、弁護士から裁判官を採用しています。この制度を「ミックス・システム」と呼ぶことがあります。
 我が国において裁判官の人事権を掌握している最高裁判所は、優秀な弁護士であれば裁判官に採用しようという意向のようで、毎年4月と10月に弁護士を裁判官として採用しています。
 日本弁護士連合会(日弁連)は「法曹一元」を実現する手段として「弁護士任官」を位置づけ、積極的に取り組んでいます。弁護士任官を推進するために弁護士任官推進センターを組織し、同センターが、毎年数回日本各地でブロック大会を開催して、弁護士任官希望者を募っているのです。
もっとも、法曹一元を実現するためには、毎年相当な数の弁護士を裁判所に送り込まねばなりません。しかし、実際のところ、近年の採用人数は毎年数名レベルにとどまっています。
 前講釈が長くなりましたが、今回は、1月に福岡市で開催された同センターの九州ブロック大会をご紹介します。
 福岡市は九州の中心地で弁護士数も多いことから、弁護士任官希望者を発掘できる可能性があること、また、交通の便がよいため、九州各地から希望者が集まりやすいこと、などから過去にも数回大会が開催されています。
 1月という冬季開催でしたが、比較的温暖で、街中では韓国、台湾、中国から来たと思われる大勢の観光客が歩いていました。
 今回の大会では、同センターの委員が弁護士任官の意義と現状を説明した後、現在福岡の裁判所に勤務している、弁護士任官された裁判官数名が参加したパネルディスカッションが行われました。
 弁護士任官した裁判官は、裁判所の組織内では、いわば中途採用組です。しかし、概ね優秀ですし、自らの弁護士経験を生かして、事案の柔軟な解決を目指す方が多いと言われていす。
 裁判所の利用者にとっては、弁護士任官した裁判官でも、キャリア裁判官でも同じに見えるかもしれません。しかし、弁護士は、自分の事件を担当する裁判官の経歴を必ず調べるものなのです。以上
 

(2018.02)

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