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『地域司法について』
 

 今回は3月18日に長野県の佐久市で開催された地域司法に関する協議会をご紹介したいと思います。佐久市は、東京駅から北陸新幹線で1時間20分、浅間山の見える人口約10万人の都市です。
 今回の協議会は、長野地方裁判所佐久支部管内における司法制度の充実を求めるため、長野県弁護士会と日本弁護士連合会の共催で開催されました。
 大都市に住んでいる方には分かりにくいかもしれませんが、地方における司法制度は、医療制度と並んで、地域住民の重要なライフラインなのです。
 当日は、次期日弁連会長や長野県弁護士会会長らが参加したほか、佐久支部管内の首長、副首長、議員、調停委員、社会福祉士、保護司等が多数参加しました。協議会では、裁判所の佐久支部に家庭裁判所調査官がいない、少年審判が取り扱われていない、裁判所の庁舎にエレベーターがない等といった様々なテーマが取り上げられました。
 これらのうち家庭裁判所調査官(以下「調査官」といいます。)とは、家庭裁判所で取り扱っている家事事件や少年事件の調査を担当する専門職員です。
 調査官は、家事事件において、紛争の当事者や子どもに面接して問題の原因や背景を調査します。必要に応じて社会福祉や医療の関係機関と連携し、当事者や子どもにとって最も良い解決方法を検討して裁判官に報告します。
 また、少年事件において、調査官は非行を犯した少年と保護者に面接して非行に至った原因、生育歴、性格、生活環境等の調査を行います。少年の性格や資質を把握するために心理テストをおこなったり、児童相談所、保護観察所、少年鑑別所等の関係機関に連絡したりしながら、少年が立ち直るために最も適切な方法を検討して裁判官に報告します。
 特に、裁判官が少年に対して一定の見守期間を設定する「試験観察」という処分を付す場合、調査官は継続的に当該少年の行動や生活状態を観察することになります。
 以上の通り、調査官は、家事事件や少年事件において重要な職責を担っているのですが、現在、裁判所の佐久支部には調査官が常駐していません。隣接する上田支部の調査官が填補(出張)しているのです。
 しかし、佐久支部では調査官の日程調整が必要となるため、佐久支部の家事事件に対する調査官の関与が少なくなる、佐久支部管内の少年事件に試験観察が付されにくくなるといった懸念が指摘されました。
 他方で、調査官の人数は裁判所予算による制約を受けます。裁判所側は、管内事件数や交通機関の便等の様々事情を総合的に勘案して、限りある調査官の配置を決定していると説明しています。
 しかし、今回の協議会において、長野県における調査官の常駐数は、長野本庁6名、松本支部4名、上田支部5名、諏訪支部1名、伊奈支部2名、飯田支部2名に対して、佐久支部だけが0名であること、過去5年間の統計を見ると、佐久支部の家事新受事件数は、長野本庁、松本支部、上田支部より少ないものの、諏訪支部、  伊奈支部、飯田支部より多いこと等が報告されました。 
 全国的に同様の問題があると思 いますが、具体的なニーズに合わせて調査官の人数や配置を合理的かつ柔軟に見直すべきではないかと考えさせられた次第です。以上
 

(2018.04)

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