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『弁護士費用保険(2)』

 前回ご説明したとおり、近年「権利保護保険」すなわち「弁護士費用保険」の普及が進んでいます。
 日本弁護士連合会が協定を締結した保険会社や共済協同組合は、今年7月時点で19社にのぼります。協定各社の保険商品には、加入者(商品によってはその家族も)が各地の弁護士会から弁護士の紹介を受けられるという条項があります。また、知り合いの弁護士に依頼しようとするときにも、保険の範囲内で弁護士費用を支払ってもらえる条項があります。
 弁護士費用保険の販売件数は、2001年度に約1万1488件からスタートしましたが、2018年度には約2800万件に上っています。また、実際の取扱い事件数も2001年度は3件でしたが、2018年度には3万9087件になっています。
何事も起こらなければ、損害保険の約款など誰も読まないと思いますが、万一問題が生じたときには、弁護士費用保険が付いているかどうかを確認されることをお勧めします。
 現在、最も広く利用されているのは、交通事故によって損害を被った被害者が加害者に対して損害賠償を請求する際の弁護士費用を補填する自動車保険の条項です。
自動車の交通事故以外にも、例えば、工事中のビルから落下した鉄骨が当たって怪我をした場合、走行中の自転車に衝突されて怪我をした場合、酔っぱらいの暴漢に襲われて怪我をした場合、上階の水漏れによって家財が水浸しになった場合等の被害者が、加害者に対して損害賠償請求する際の弁護士費用を補填する条項が、火災保険等に付いている場合があります。
 また、反対に、自転車を運転していて誤って歩行者と衝突して怪我をさせた場合、自宅の水漏れによって下階の住戸の家財道具を水浸しにした場合、ゴルフ中に打ったボールが他のプレーヤーにあたり怪我をさせた場合等の加害者用の個人賠償責任保険に、弁護士費用を補填する条項が付いている場合もあります。
 近年急速に普及した弁護士費用保険ですが、利用者側で注意しなければならないのは、保険でカバーされる弁護士費用が弁護士費用全額ではない可能性があるという点です。
 通常、各種保険には保険金の上限が設定されています。また、弁護士報酬は現在自由化されているので、権利保護保険の報酬規程(いわゆるLAC基準)の範囲内で受任するかどうかは弁護士と依頼者の委任契約に委ねられています。
弁護士との間で委任契約を締結する際には、LAC基準内かどうか、基準を超える場合の支払方法等について、個別に確認する必要があります。以上

(2019.12)

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