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『新型コロナウィルス(3)』

 新型コロナウイルスが猛威をふるっています。
 わが国の感染者数は既に1万人を超え死亡者数も200名を突破しました。4月7日に改正新型インフルエンザ特措法に基づく「緊急事態宣言」が東京・大阪などの7都府県に出され、16日には対象地域が全国に拡大されました。
 平日の出勤者や週末の外出者の数は大幅に減っているようです。
 しかし、その結果、多くの企業が休業や廃業を迫られており、経済的ダメージは深刻です。しかも、現在の状況では非常事態宣言が当初予定されていた5月6日に解除されるかどうかもわかりません。ところが、多くの企業では「株主総会」の季節が迫っているのです。
 株主総会には定時総会と臨時総会があり、定時総会では貸借対照表・損益計算書の確定、事業報告・計算書類の確定、剰余金の配当などの決議を行います。
 法律上、定時総会は、各事業年度の終了後「一定の時期」に招集することになっています(296条1項)。そこで、定時総会の招集は、決算期後に決算をして、計算書類を作成して、その監査を経た後で、ということになります。
 ただし、株主名簿の「基準日」の株主の権利行使期間は3カ月以内という制限があるので(会社法124条2項)、通常、定時総会の「開催日」は決算期後3か月以内とされています。現在、多くの企業では3月31日を決算期とする関係で「基準日」も3月31日とし、その結果、定時総会を毎年6月末ころに開催しているのです。
 しかし、この状況下において、いわゆる「3密」(密閉、密集、密着)型の株主総会を開催することはできません。そこで、この問題の解決策として2つの方法が考えられています。
 ひとつは、例年通り6月に定時総会を開催するものの、できるだけ「3密」を避けるという方法です。
 例えば、会場の出入口に消毒液を置く、来場者にマスクを配布する、来場者の座席の間隔を空ける、会場のドアや窓を開けて通気する、会場に医療関係者を準備するなどです。
 もうひとつは、会社法では定時総会の「開催日」が特定されているわけではないことから、前提となる「基準日」を変更することにより「開催日」を延期するという方法です。
 もっとも、企業によっては定款で「開催日」や「基準日」を特定している場合もあります。しかし、この特定については、天変地異に際しては合理的な時期に変更することが可能と解釈する訳です。法務省は今年2月28日にかかる解釈の適法性を認めています。
 さらに、定時総会の開催を議論するための取締役会の開催方法にも影響が出ています。多くの企業では取締役が集合して議論する会議方式を避けて、スカイプ、ズーム、電話会議などのコミュニケーション・ツールが利用されています。
 これらのツール利用は概ね許容されていますが、構成員全員が議題について自由に意見交換できる必要があります。以上
 

(2020.05)

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