トピックス

『新型コロナウィルス(2)』

 新型コロナウイルスが世界的に蔓延しています。
 3月に入り、イタリアやスペインなどの欧州諸国や、アメリカやカナダといった北米大陸にまで感染が拡大してきました。
 東京オリンピックの延期が決まったわが国でも、その決定直後から都内の感染者数がどんどん増えています。小池都知事が外出自粛を連日呼び掛けていますが、浸透度はまだ低いようです。
 世界的な感染拡大により、景気も急速に悪化してきました。突然倒産したり、従業員を解雇したり休職させたりする企業数も飛躍的に増えています。
 3月になってしばしば報道されているのは、卒業直前の学生に対する内定取消しです。景気悪化のためですが、卒業直前になって内定取消しされる学生の立場は誠に悲惨です。
 法律上、いわゆる「内定」とは「始期付解約権留保付労働契約」を締結した状態と理解されています。「解約権留保付」ですから、企業から解約される可能性はあるわけです。
 もちろん、企業がいつでも自由に解約権を行使できるわけではありません。
 この点、判例は「採用内定の取消し事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって…解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と、解約権を限定する考え方を示しています。
 例えば、内定者が、卒業できない、経歴を詐称していた、健康状態が突然悪化した等の場合には、企業側が解約権を行使できると考えられています。
 これに対して、コロナウイルス蔓延による企業業績悪化を理由とした解約権行使の場合は、上記の例外的場合には該当しませんから、正規社員の整理解雇に準じた厳格な判断基準を設ける必要があります。
 すなわち、①内定取消しの必要性、②内定取消し回避のために努力を尽くしたか、③人選の妥当性、④内定取消しに至る過程での手続の妥当性などの要件を満たす必要があります。
 この点、最近よく見聞きするのは上記④の要件が欠けている場合です。企業側にも切羽詰まった事情があるとは思いますが、採用内定により学生を拘束してきたのは企業側なのです。就職直前になって内定取消しされる学生の立場に十分配慮する必要があります。
 内定取消しをする企業側としては、学生に対して誠意をもって内定取消しの必要性や人選の妥当性などを説明するべきです。その過程でさらに個別の話し合いに応じたり、慰謝料を提示したりする場面も出てくるでしょう。
 内定を取消された学生側には、整理解雇に準じる訳ですから、同意するかどうかをハローワークや地元の弁護士会に相談することをお勧めします。以上
 

(2020.04)

インデックス

このページの先頭へ