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『改正民法の要点(2)』

 なかなか梅雨が明けず、今年も長雨により各地で河川の氾濫や土砂崩れなどが発生しています。被災された方には心よりお見舞い申し上げます。
 さて、改正民法の「保証」の2回目です。前回は、貸金等債務以外の「個人根保証契約」に関する新しい規制についてご説明しました。今回は、事業用融資における第三者保証の制限に関する規定についてご説明します。
 従前、民法の保証制度は、特に中小企業向けの事業用融資において、法人の信用補完や経営の規律維持の観点から、重要な役割を果たしているといわれてきました。
 しかし、借入企業の事業と直接関係のない第三者が保証人となり、想定外の多額の債務の保証履行請求を受け、生活破たんに追い込まれる事例も、昔から後を絶ちません。
 そこで、現代社会においては、借入企業の経営者はともかく、第三者保証は基本的に抑制するべきであると考えられるようになりました。
 そのため、改正民法は「事業のために負担した貸金債務」の保証契約は、原則として、公証人があらかじめ保証人本人から直接保証意思を確認しなければ効力を生じないものとし(465条の6)、ただし、①当該企業の理事、取締役、執行役等、②議決権の過半数を有する株主等、③主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者については、例外的に公証人による保証意思確認を不要としました(465条の9)。
 ここで上記の「事業のために負担した貸金債務」とは、事業主が自らの事業に用いるために借り入れた貸金債務(以下「本件貸金債務」)を意味します。
 例えば、製造業を営む会社が製造用の工場を建設したり、製造の原材料を購入したりするために借り入れた貸金債務などです。いわゆるアパート・ローンも、本件貸金債務と解されます。他方で、貸与型の奨学金は事業のための借り入れではないので、本件貸金債務には該当しません。
 また、借主が資金使途を事業資金と説明し、貸主もその前提で金銭を貸し付けたが、実際には事業以外に費消された場合にも、その債務は本件貸金債務に該当します。他方で、借主が住宅ローンと説明し、貸主もその前提で住宅ローンを供与したが、実際には事業のために費消された場合は、本件貸金債務に該当しません。
 なお、上記③の「主債務者が行う事業に現に従事している」とは、保証契約の締結時点において、その個人事業主が行う事業に実際に従事していることが必要であり、単に書類上事業に従事していることになっているだけでは足りません。保証契約の締結に際して、一時的に事業に従事したということでも足りないと解されています。さらに、ここでいう「配偶者」とは、法律上の配偶者に限られています。以上
 

(2020.08)

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