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『改正民法の要点(3)』

 ようやく梅雨が明けたと思ったら、今度は猛暑ですね。あまりの熱気に墓参りにも行けないうちに、お盆休みは過ぎてしまいました。その上、新型コロナの感染拡大によって、どこに行くにもマスクが必要となり、常に息苦しく感じます。
 さて、改正民法の「保証」の3回目です。前回は、事業用融資における第三者保証の制限についてご説明しました。今回は、債務者の保証人に対する「情報提供義務」の概略についてご説明申し上げます。
 従前から、保証人は、主たる債務者の財産状況を十分把握しないまま保証を引き受けたり、債務者は、保証人に自己の財産状況を正確に説明しないまま保証を依頼したりといった、財産関係ではなく人間関係に重きを置いて締結された保証契約が多々存在しています。しかし、その結果、保証人が不意打的に過大な保証債務を負担することになって生活が破綻してしまうという被害が発生していたことも事実です。
 これは、法律上、保証人は債務者の財産状況を知りうる立場になく、また、主たる債務者も自己の財産状況を保証人に開示する義務を負っていなかったことにも原因があります。
 そこで、改正民法は、主たる債務者が個人(法人を除きます)に対して事業上の債務(貸金債務に限りません)の保証を委託する場合①財産及び収支の状況、②主たる債務以外の債務の有無並びにその債務の額及び履行状況、③主たる債務の担保として提供するものがあればその旨及びその内容について、保証人に情報を提供する義務を負わせることにしました(民法465条の10第1項)。
 また、法務省通達では、公証人が保証意思を確認する場合には、主たる債務者が保証予定者に対して情報提供義務を履行し、保証予定者がその情報を踏まえて保証人となろうとしているかどうかを見極めるものと定められています。
 そして、主たる債務者が情報提供義務に違反したために、保証人が主たる債務者の財産状況について誤信し、そのために保証人が債権者に対して保証契約を申込み又は承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者が情報提供義務を怠ったことを債権者が知り又は知ることができた場合には、保証人は保証契約を取り消すことができると定められました(同条第2項)。
 つまり、主たる債務者と保証人の関係だけでなく、債権者の認識も加えることにより、保証人保護と保証取引安全のバランスを図っているのです。
 しかし、債権者にどのような事情があれば、主たる債務者の情報提供義務の不履行を知ることができたといえるのかが争点になっています。
 保証契約締結時において、債権者が主たる債務者や保証人に対して、主たる債務者の財産状況について正確な説明がなされているのか確認するべきであるという意見があります。また、実務上、保証人から正確な説明を受けましたとの表明保証を得るという方法も検討されています。しかし、表明保証の書面だけでは十分安全ではないと指摘されています。以上
 

(2020.09)

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