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『改正民法の要点(4)』

 9月になり、秋風が心地よい季節となりました。
 連休中、新潟の越後湯沢に行ったところ、例年より稲刈りが大幅に遅れていることに気づきました。雨が続いた上に、ほとんどの田で稲が倒れてしまい、コンバインがうまく入らないそうです。稲が倒れた原因は、茎が成長し過ぎたとか、稲穂が実り過ぎたとか、色々と説明されています。いずれにしても早急に稲刈りをしないと、コメの品質に影響するそうです。日本一のコメ産地ですから、今年の作柄が心配になります。
 さて、改正民法の「保証」の4回目です。前回は「債務者」の保証人に対する情報提供義務についてご説明申し上げました。今回は「債権者」の保証人に対する情報提供義務についてご説明申し上げます。
 保証人の債権者に対する負担額は、主たる債務者が支払いを遅延した後に発生する遅延損害金によって予想外に増えてしまいます。特に、主たる債務者が期限の利益(分割払いの利益)を喪失して、一括返済を求められる時点以降は、遅延損害金が大きく膨らんでしまうのです。
 仮に保証人が、主たる債務者による延滞や期失を知っていれば、自ら立替払いをして遅延損害金の発生を防ぐことが可能です。ところが、現行法上、保証人は主たる債務者の債務の履行状況を当然に知ることはできません。主たる債務者のプライバシーでもあることから、保証人だからといって、無制限に情報を開示してよいのか問題があるのです。
 そこで、改正民法は、主たる債務者の履行状況に関し、債権者の保証人に対する情報提供義務について新たな規定を設けました。
 まず、主たる債務者から委託を受けた保証人(法人も可)から請求を受けたときは、債権者は、遅滞なく、主たる債務の①不履行の有無、②残額及び③残額のうち弁済期が到来している金額等について情報提供しなければならないものとされました(民法458条の2)。
 債権者に対して情報提供請求できる者の範囲を、主たる債務者から委託を受けた保証人に限ったことで、保証人の保護と主たる債務者のプライバシーとの均衡を図ったのです。
 次に、債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は個人の保証人に対し、主たる債務者の期限の利益の喪失を知ったときから2カ月以内に、その旨を通知しなければならないものとされました(民法458条の3第1項)。
 この場合には、保証人も主たる債務者と同じく期限の利益を喪失することになるので、個人の保証人を保護するため債権者に対して積極的な開示義務を課したのです。
 仮に、債権者が、2か月以内に保証人に対して主たる債務者の期限の利益の喪失を通知しなかったときは、期限の利益の喪失から実際の通知までに発生した遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生じるべきものは除く)の保証履行を請求することはできないものとされています(同条第2項)。以上
 

(2020.10)

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