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『改正民法の要点(10)』

 新型コロナウイルス対策として、令和3年4月25日から、東京、大阪、兵庫及び京都において、3回目の緊急事態宣言が発令されました。
 先月21日に緊急事態宣言が完全解除されたものの、「まん延防止等重点措置」にもかかわらず、感染者数が増え続け、わずか約1カ月で再発令に至ったものです。
 感染者数を抑制するためにはワクチン投与しかないと報道されていますが、いつどの程度投与されるのか、まだ確定的な見通しは立っていないようで、今後の推移が注目されるところです。
 さて、前回から引き続き改正民法の「約款」についてご説明致します。
 改正民法は、ある特定の者が、不特定多数の者を相手方とする取引であって、その内容の全部又は一部を画一化することが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と呼び、定型取引において、契約内容にすることを目的として、その特定の者により準備された条項を「定型約款」と定義しています。
 そして、定型取引の中には、例えば、水道・電気・ガス等の供給契約や、銀行・保険・インターネット等の利用契約のように、長期間に渡って継続するものがあります。その期間中に、経済情勢の変化や法令の改正などによって、定型約款の内容を事後的に変更する必要性が生じることがあります。
 しかし、契約内容を事後的に変更するためには、民法の原則に従う限り、個別に相手方の承諾を得ることが必要です。例えば、建物賃貸借契約の家賃を賃貸人が値上げする場合は、賃借人の個別の同意が必要となるのです。
 しかし、大量の顧客を相手方とする定型約款の場合、個々の顧客の同意を同時かつ個別に取り付けることはほぼ不可能に近いところです。
 このような不都合を避けるため、約款の条項の中に「必要に応じて規定の内容を変更することがある」旨を定めている場合もあります。しかし、このような条項が常に有効かどうかは疑問で、少なくとも顧客に一方的に不利益な変更が有効となるとは考えられていません。
 そこで、改正民法は、実際に顧客の個々の同意がなくても変更を可能とする一方で、顧客の利益保護の観点から、変更は合理的な場合に限定する旨を規定することにしました。
 すなわち、民法第548条の4第1項は、①変更が相手方の一般の利益に適合する場合又は②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することが可能であると規定しています。以上
 

(2021.05)

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