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『改正民法の要点(11)』

 今年はまだ5月だというのに近畿・東海地方まで梅雨入りしています。長雨による水害の発生が懸念されるところです。
 さて、繰り返しご説明していますが、改正民法では新しく「定型取引」と「定型約款」という考え方を導入しています(548条の2以下)。
 「定型取引」とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引であって、その内容の全部又は一部を画一化することが、当事者双方にとって合理的なものをいいます。また「定型約款」とは、「定型取引」において、契約内容にすることを目的として、その特定の者により準備された契約条項のことです。
 では、具体的にどのような契約が「定型約款」に該当するのかですが、例えば鉄道・船舶等の旅客運送約款、電気・水道等の公共供給約款、保険約款、インターネット・サイト利用約款等のように、不特定多数の利用者に同種のサービスを画一的に提供する契約が典型的なものとして挙げられています。
 これらと対照的に、例えば、労働契約、売買契約、賃貸借契約等のように、特定の当事者間の個別契約は「定型約款」ではありません。
 もっとも、例えば、大規模マンションの賃貸借契約の「ひな型」のように、契約内容の画一化によって管理コストが抑えられ、入居者の利益にもなっていると認められる場合は、例外的に「定型約款」に該当しうると考えられています。
 また、相手方が不特定多数であっても個別に交渉して内容が変更されうる契約は「定型約款」ではないと説明されています。
 例えば、銀行取引約定書は、個別に交渉して修正されることがあるので定型約款には該当しないが、住宅ローン契約のように審査が定型化・画一化しているものは「定型約款」に該当すると説明されています。
 確かに、住宅ローン契約については、個別の交渉によって修正されることは通常ありません。ただ、銀行取引約定書も、銀行と借主の間の基本契約ですから個別の交渉で修正される場面を見ることはあまりないと思われます。借主が大企業で銀行より交渉力が強い場合等において、個別に修正されることもあるのでしょう。
 しかし、そうだとすると、住宅ローン契約が変更されないのは、借主が個人なので、金融機関に比べて交渉力が圧倒的に弱いからに過ぎず、本来は個別に変更可能な契約なのかもしれません。
 この考察の延長線上にフランチャイズ契約があります。フランチャイズ契約の内容は通常画一的ですが、フランチャイジーにとって契約内容が画一的なことに特段のメリットがある訳ではありません。交渉力がフランチャイザーよりも弱いから画一的な契約内容を受け入れていると考えられます。そこで、一般に、フランチャイズ契約は「定型約款」ではないと理解されています。以上
 

(2021.06)

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