トピックス

『新型コロナと権利制限』

 新型コロナのオミクロン株の感染が拡大しています。日々、東京都で1万人以上、全国で7万人以上の新規感染者数が確認されています。この事態を受けて、政府は、東京都をはじめとする多数の地域にまん延防止措置を発令しましたが、感染拡大を押さえ込めていません。
 他方で、経団連会長は、1月11日、昨年と異なり、ワクチンや経口治療薬が入手できるので、政府は科学的な知見に基づく対応を採るべきであり、特に外国からの入国を制限している現行の水際対策の緩和を求めると発言しています。経済同友会からも同様な意見が出ていますから、政府も現時点では緊急事態宣言の発令よりも、ワクチンのブースター接種の前倒しに努めるようです。
 仮に緊急事態宣言が発令されますと、新型コロナ特措法に基づき営業時間の大幅な短縮や休業まで求められる可能性があります。その場合には、前回ご説明した通り、営業の自由(憲法22条)が「公共の福祉」を理由として規制される場面となりますので、当該規制について、目的と手段の二つの観点から合理性の有無が審査されることになります。既に、東京都や沖縄県で違憲訴訟が提起されています。
 諸外国では、さらに、ワクチン接種の義務化や証明書の提示義務化等が行われているようです。
 例えば、カナダでは、全ての連邦政府職員と政府規制を受ける航空、銀行、放送局等の職員に対して、アメリカでも、従業員100人以上の民間企業、医療従事者、政府機関の業務を請け負う業者等に対して、ワクチン接種等を義務付けました。フランスでは、テレワークやマスク着用の義務を撤廃する代わりに、飲食店等におけるワクチン接種証明書の提示を義務付けしています。
 ただし、これらの規制に対する反対も根強く、アメリカでは、連邦最高裁判所が、民間企業の職員に対するワクチン接種等の義務付けはあまりに広範囲で、職場の安全を規制する労働安全衛生庁の権限を越えていると判断しました。
 もっとも、同最高裁は、医療機関の職員に対する接種義務付けは認めたので、対象者の種類や範囲によって、規制手段の合理性を判断しているようです。
 わが国では、差別に繋がる懸念があるためか、ワクチン接種を義務付けしたり、施設利用の条件としたりする規制には概ね消極的です。
 最近、山梨県知事が、同県内で過去最大の新規感染者数が報告されたこと等から、ワクチン未接種者に対して不要不急の外出や移動の自粛を呼びかけました。
 未接種者の安全を懸念しての発言でしたが、未接種者に対する差別であるとの批判を受け、同知事は、未接種者の接種しない選択を否定する趣旨ではないとの追加説明をせざるを得ませんでした。以上
 

(2022.02)

インデックス

このページの先頭へ