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『改正民法の要点(16)』

 3月21日、新型コロナウイルスまん延防止措置が解除されました。確かにオミクロン株の感染者数は全国的に漸減傾向となりましたが、3月下旬に至っても、東京都では1日9000名以上の新規感染者数が確認されています。感染力のより強い変異型の割合が増えている上、花見や歓送迎会などの季節的なイベントも重なり、リバウンドの様相が強まっています。
 海外では、2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻により多数の死傷者が出ており、また数百万人もの市民が国外へ脱出しています。国連総会が即時停戦決議を行い、国際司法裁判所が即時停戦命令を出しましたが、ロシアは無視する態度をとっています。国の内外において懸念が尽きません。
 さて、今回も改正民法の「債権譲渡」についてご説明します。
 前回ご説明したとおり、債権譲渡とは債権者の債務者に対する債権を、債権者と譲受人間の売買により、譲受人の債務者に対する債権にすることです。
 債権譲渡は債権者と譲受人の合意だけで成立しますが、債務者が弁済の相手方を債権者に固定したい場合、旧法では「譲渡禁止特約」を設けて、債務者の承諾がない限り債権譲渡を無効とすることができました(旧466条)。
 しかし、新法では、譲渡を制限する内容の特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられないと定められています(466条第2項)。
 したがって、譲渡制限特約付債権の譲渡も有効となりますが、債権譲渡が債権者と債務者の間の特約違反であると解される限り、債務者が債権者との契約について、特約違反を理由として解除できる余地があります。
 例えば、下請企業が元請企業に対する請負代金を金融機関に譲渡担保として提供する場合、それが特約違反にあたるとすると、下請企業は元請企業から下請契約を解除されたり、今後の取引を打ち切られたりする虞があります。金融機関にとっても下請契約が解除されてしまうと、譲渡担保にとった債権の価値が毀損してしまいます。
 この問題について、新法では何も規定されていませんが、新法が債権譲渡を促進する観点から制定された趣旨を踏まえ、この場合におけるいくつかの解釈論が提示されています。
 例えば、譲渡制限特約とは債務者を保護するためのものであるところ、前回ご説明したとおり、新法においては債務者保護のための規定が確保されているので、債権譲渡は特約違反には該当しないという見解があります。
 また、新法下では債権譲渡が行われても債務者にさほどの不利益は生じないので、特約違反だからといって直ちに契約解除や取引打ち切りに至るのは債務者の権利の濫用にあたるとの考え方もあります。以上
 

(2022.04)

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