トピックス

『改正民法の要点(20)』

 紅葉の季節となり、コロナ禍も一休みして、各地に観光客が押し寄せています。私は先週大阪で会議があり、その日は大阪から京都を超えて大津まで移動して泊まりました。近江神社や三井寺、彦根城等、琵琶湖周辺の秋の風情は大変美しいものでした。
 さて、今回も2023年4月から施行される民法改正のうち「共有」の規定についてご説明します。
 「共有」とはひとつの物を2人以上の者が共同で所有することです。前回ご説明したとおり、所有者が複数いるため、共有物を「変更」「管理」「保存」するためには、それぞれ共有者「全員」「持分価格の過半数」「単独」の同意が必要となります。
 しかし、いちいち煩雑であることから今回の改正で新たに「共有物の管理者制度」が設けられました。
 共有物の管理者の選任・解任は共有者の持分価格の過半数で決定されます(民法252条第1項)。
 選任された管理者は、個々の管理に関する事項については、いちいち共有者の同意を得ることなく行うことができます(民法252条の2第1項)。ただし、共有者が「共有物の管理に関する事項」を決定した場合は、これに従って職務を行わねばなりません(同第3項)。
 また、管理者が、前回ご説明した「軽微な変更」を超える変更を行う場合には共有者全員の同意を得る必要があります(同第1項)。
 共有者の中に所在不明者がいる場合は、管理者の申立により、裁判所の決定を得て、所在不明者以外の共有者の同意を得て共有物に「変更」を加えることができます(同第2項)。
 なお、管理者が、共有者の「共有物の管理に関する事項」の決定(同第3項)に違反した場合、管理者の行為は、共有者に対して効力はありませんが、共有者は善意の第三者に対して無効を主張できません(同第4項)。
 例えば、土地建物の共有者が敷地の清掃を外部委託する回数を月1回と定めていたところ、管理者が業者に週1回清掃を委託していた場合、委託回数が月1回に限定されている事実を清掃業者が知らなければ(善意)、清掃業者は週1回分の清掃費用を共有者に請求することができます。
 ところで、この共有者の「共有物の管理に関する事項」の決定については、共有物を使用する既存の共有者がいる場合も可能かどうか議論されてきましたが、今回の改正で可能である旨明定されました(民法252条第1項)。
 ただし、当該決定が、共有者の決定に基づいて共有物を使用している共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その使用者の承諾を得なければなりません(民法252条第3項)。
 例えば、土地の共有者が駐車場を廃止して駐輪場を設置する旨決定した場合、駐車場を利用していた共有者の承諾が必要となります。要するに、承諾料が必要になる訳です。以上
 

(2022.12)

インデックス

このページの先頭へ