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『改正民法の要点(21)』

 新しい年となりましたが、相変わらず新型コロナの新規感染者数は1日あたり数万人レベルで推移しています。コロナだけでなく、インフルエンザや花粉症にも注意が必要です。政府は屋外では原則マスク不要と宣伝していますが、そうはいかないというのが人情です。
 さて、今回は今年4月から施行される改正民法のうち「裁判による共有物分割手続」の概要についてご説明します。
 例えば、二人の兄弟がお金を出し合って土地を購入した場合、当該土地を今後どのように利用するのでしょうか。土地が広ければ現物で分ければよいですが、その場合でも、出したお金の割合、日照、地形等によっては厄介な問題です。
 共有者間の「協議」が整わない場合、その土地の分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)。
 裁判所でも共有物の現物分割ができないとき又は現物分割によって価値を著しく減少させるおそれがあるとき、裁判所は「競売」を命ずることができます(同条2項)。競売による売却代金を共有者間で分けるという「換価分割」をすることになるのです。
 しかし、例えば、兄弟の片方が行方不明になっている場合はそもそも「協議」ができません。また、判例では兄弟の片方が所有権を取得し、他方がその代わりに金銭を取得するという解決方法(代償分割)も認められています。
 そこで、改正法は、共有物の分割について「協議が整わないとき」に加え「協議をすることができないとき」も、分割を裁判所に請求することができると明示しました(改正258条1項)。
 また、改正法は、裁判所の取りうる共有物の分割方法として、まずは①現物分割と②代償分割による旨を定めました(改正258条2項)。
 そして、①と②の方法により共有物を分割することができないとき又は分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるとき、裁判所はその競売を命ずることができる(改正258条3項)と規定しました。要するに、競売による「換価分割」は最後の手段となります。
 さらに、改正法は、共有物分割裁判の効果を高めるため、裁判所が共有物分割裁判において、当事者に対し、金銭の支払い、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる旨を明文化しました。
 加えて、改正法は、不動産が数人の共有である場合に、共有者が他の共有者を知ることができず又はその所在を知ることができないとき、裁判所は、共有者の請求により、所在不明者の持分を取得させる裁判をすることができる旨定めました(改正262条の2第1項)。
 もちろん、この場合、所在不明者は、持分を取得した共有者に対し、自分の持分について時価相当額の支払いを請求できます(同条4項)。以上
 

(2023.02)

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