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『改正民法の要点(22)』

 2月の東京は穏やかな天候に恵まれ概ね過ごしやすい日々となりました。休日に近所の公園の梅まつりに出かけたところ、コロナ禍も一服したせいか、多くの住民が家族連れで散策していました。このまま順調に以前の普通の生活に戻れればよいと思いました。
 さて、今回は今年4月から施行される改正民法のうち「所有者不明土地建物等管理制度」についてご説明します。
 民法には従前から行方不明者の財産を管理する制度として「不在者財産管理制度」や「相続財産管理制度」が設けられていました。
 しかし、これらは対象者毎に財産全般を管理する制度なので、財産毎にみると管理に行き届かない場合があり得ました。また、所有者が管理を放置している場合にはこれらの制度を利用できないという問題も指摘されていました。
 そこで、改正法は、新たに所有者不明土地建物管理制度(改正民法264条の2~264条の8)と、管理不全土地建物管理制度(改正民法264条の9~264条の14)を設けて、裁判所による土地建物毎の管理人の選任を可能としました。
 管理人の選任を裁判所に請求できるのは、所有者不明土地建物又は管理不全土地建物の管理に利害関係を有する者(利害関係人)です。
 例えば、〇土地建物の管理不全により不利益を被るおそれがある隣接地所有者等(いわゆるゴミ屋敷や崩落危険性のある崖地の周辺住民)、〇土地建物を時効取得したと主張する者、〇土地建物を取得してより適切な管理をしようとする者(公共事業の実施団体や民間の買受希望者)等が考えられます。
 裁判所から選任された管理人は、対象土地建物のほか、当該土地建物にある所有者の動産や売却代金等を管理の対象とすることができます。建物の場合は借地権も管理の対象となります。
 管理人は、単独で土地建物の保存行為や利用・改良行為(対象土地建物の性質を変えない範囲に限る)を行うことができます。また、裁判所の許可を得て、対象土地建物の売却、債務の弁済、訴えの提起、建物の取壊し等を行うこともできます。管理人は、対象土地建物の所有者の負担により、裁判所が定める額の費用の前払い及び報酬を受けることができます。
 なお、管理人は、善良な管理者の注意をもって、かつ、対象土地建物に数人の共有者があるときは誠実かつ公平にその権限を行使しなければなりません。
 もし管理人がこれらの義務に違反して対象土地建物に著しい損害を与えたとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人が裁判所に管理人の解任を請求することができます。以上
 

(2023.03)

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