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『改正民法の要点(23)』

 今年の東京の3月は大変暖かく、例年より桜の開花が早くなりました。満開になってから数日間雨が続いたのは残念でしたが、数年ぶりに大勢の人々が戸外に出て、花見を楽しんでいました。
 さて、今回は今年4月から施行される改正民法のうち「相続」に関係する部分についてご説明します。
 今回の民法改正は所有者不明土地問題の解決を目指していますが、所有者不明土地のなかには、何世代にも渡って遺産分割が行われないまま数次の相続を経てしまい、もはや現在の所有者が誰なのか判らなくなっているものが数多く存在します。
 そこで、まず、遺産分割を簡易に決着させるため、相続開始から10年を経過した後は「法定相続分」または「指定相続分」を遺産分割の基準とし「具体的相続分」を適用しないとする規定が設けられました(改正民法904条の3)。
 ここで「法定相続分」とは、法律により定められた相続分(民法900条)をいい、「指定相続分」とは、遺言によって指定された相続分(民法902条)をいいます。
 これに対して「具体的相続分」とは、特別受益分や寄与分を考慮した相続分をいいます。要するに、生前贈与や療養看護等の具体的事情まで考慮した相続分(民法903条~904条の2)のことです。
 もちろん、相続人がこの10年経過前に家庭裁判所に遺産の分割請求をすれば「具体的相続分」まで考慮してもらえます(改正民法904条の3第1号)。
 また、相続人に10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由があり、かつ、当該相続人がかかる事由が無くなってから6か月以内に家庭裁判所に遺産分割請求をしたときも具体的相続分により遺産分割されます(同条第2号)。
 第2に、遺産となっている土地を相続人が分割するためには、従前の実務では地裁や簡裁の共有物分割請求ではなく、家裁の遺産分割請求を行う必要がありました。
 確かに、遺産の分割については、事案に応じた具体的相続分の主張がなされることが多く、また、遺産全体を一括して分割するメリットもあるので、家裁のきめ細かな遺産分割手続きに合理性が認められます。
 そこで、改正民法は、従前の実務に従い、遺産分割については、共有物分割手続きを利用できないことを明文化しました(改正民法258条の2第1項)。
 しかし、相続開始から10年経過した場合は、簡易な分割を実現するため、相続人から2カ月以内に異議の申出がない限り、共有物分割手続きで遺産の分割もできるようになりました(改正民法258条の2第2項)。
 もとより、この場合の共有物分割手続きでは、具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分が基準となります(改正民法898条2項)。以上
 

(2023.04)

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