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『改正民法の要点(25)』

 梅雨どきですが、そろそろ夏休みの予定をたてようと、久しぶりに家族で海外旅行を計画しました。ところが、1ドル144円という為替レートを見て、あまりの円安に愕然としています。かつて、1ドル90円くらいで北米に行っていたころを思い出し溜息が出てきました。現在、海外から多くの観光客が来日しているのも、この為替レートが大きな要因のひとつかと思い至りました。
 さて、今回は、今年4月から施行されている改正民法のうち「相続財産管理制度」についてご説明します。
 今般の民法改正は所有者不明土地対策が主要な目的であること、新たに所有者不明土地等管理制度が創設されたことなどについては、すでにこのコーナーでご説明申し上げました。
 他方で、旧民法には、相続人が不存在の場合に相続財産を管理する制度がありました。
 まず、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任する制度がありました。相続財産の管理人は公告で相続人などの探索を行う一方、相続人の有無が不明の場合には当該財産を「清算」する役割がありました。
 また、相続財産の清算目的とは別に、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、相続財産を「保存」する目的のための管理人を選任することもできました。
 しかし、「清算」と「保存」という異なる任務であるにもかかわらず、いずれも相続財産の「管理人」と呼ばれていること、清算型の場合には、複数回の公告を経て10か月超の手続き期間が必要であること、保存型の場合には、条文上①相続の承認または放棄まで、②限定承認された後、③相続放棄後次順位者が相続財産の管理を始めるまで、の各段階に応じて規定が分かれていたところ、相続人の単純承認後から遺産分割前までや、相続人のあることが明らかでない場合の規定がないため、この際に適切な保存ができないうちに近隣に迷惑をかける事態が生じていること、などの問題点が指摘されてきました。
 そこで、今回の改正法により、清算型の管理人については、相続財産の「清算人」と呼称されることになりました。
 また、清算人の選任から清算手続完了までの期間が6か月程度に短縮されました。
 さらに、保存型の管理人については、相続の発生から相続に関する手続きが終了するまでのすべての場面で利用できる制度になりました。
 なお、旧法では、相続放棄した者は、放棄後に相続人になった者が相続財産の管理を始められるまで自己の財産と同一の注意をもって相続財産を管理しなければなりませんでした。しかし、相続放棄した者の義務としてはいささか重過ぎるため、改正法は、放棄者の保存義務を、放棄時に現に占有している相続財産の範囲に限る旨規定しました。以上
 

(2023.07)

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