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『成年後見制度の現状(2)』

 今回は「成年後見制度」のうち「法定後見制度」の概要についてご説明したいと思います。
 法定後見制度とは、本人の判断能力が不十分になった時以降に、利害関係人の申立により、家庭裁判所が審判によって後見人等を選任する制度です。
 法定後見の申立をすることができる人は、本人、配偶者、四親等の親族、検察官及び市町村長等です。
 令和4年の統計(ただし、任意後見監督人選任事件を含む。)でみると、申立人については市町村長が最も多く、全体の約23.3%を占め、次いで本人(約21.0%)、本人の子(約20.8%)となっています。特に近年は市町村長申立事件数が増えています。
 申立の動機としては、預貯金等の管理・解約、身上保護、介護保険契約等が挙げられています。
 法定後見では、申立時点の本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの制度が利用できます。
 まず「後見」ですが、対象者は、判断能力が欠けているのが通常の状態の方です(民法7条)。
 成年後見人には、被後見人の日常生活に関する行為以外の行為に対する取消権(民法9条)と財産に関するすべての法律行為の代理権(民法859条第1項)が与えられます。
 次に「保佐」ですが、対象者は、判断能力が著しく不十分な方です(民法10条)。
 保佐人には、被保佐人の借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、不動産の新築・改築・増築など法律に列挙された行為に対する同意権(民法13条第1項)が与えられます。同意が必要な行為を、同意を得ないでした場合は、取消すことができます(民法13条第4項)。
 さらに「補助」ですが、対象者は判断能力が不十分な方です(民法15条第1項)。ただし、本人以外の者が申立をした場合には、本人の同意が必要です(民法15条第2項)。
 補助人には、申立の範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為(ただし、民法13条第1項所定の行為の一部)に対する同意権が与えられます。同意が必要な行為を、同意を得ないでした場合は、取消すことができます(民法17条第4項)。
 法定後見申立に必要な費用ですが、令和5年現在、申立手数料は収入印紙800円、登記手数料は収入印紙2600円(法定後見については家庭裁判所の嘱託により法務局で登記されます。任意後見の場合も公証人の嘱託により同様に登記されます。)、送達・送付費用は郵便切手3000円~5000円程度で、いずれも安価に抑えられています。
 ただし、対象者の判断能力を鑑定する必要がある場合には、鑑定費用が必要になります。一般的な鑑定費用は5万円~15万円程度といわれています。以上
 

(2023.11)

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