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『成年後見制度の現状(7)』

 5月に入り、沖縄や奄美地方では梅雨入りしましたが、東京では概ね気温の高い晴天が続きました。拙宅の2本の百日紅を見上げると、いずれもしっかりした若葉をたくさん付けていました。
 さて、今回は、成年後見人の立場から見た成年後見業務の一連の流れをご説明したいと思います。
 東京で弁護士が成年後見人に選任される場合には、通常、弁護士会から家庭裁判所に提出された名簿に基づき機械的に選任されています。
 つまり、東京の成年後見人は、家裁から選任されるまで、本人や申立人のことを何も知らない訳です。そのため、成年後見人は、選任されてから申立記録を吟味したり、家裁の書記官や申立人と打ち合わせしたりして、事案の概要を把握し業務の方針を立てることになります。
 また、成年後見人は、本人と実際に面談して初めてどの程度意思疎通が可能なのかを知ることになります。本人との信頼関係を築くまでに複数回の面談が必要になることもあります。私が以前担当した案件でも、本人の発語が理解できず、親族の仲介でようやく意思疎通できたということがありました。
 成年後見人は、申立人や親族だけでなく、ケアマネ、ヘルパー、生活相談員、医師、看護師、保健師、地域包括支援センター・社会福祉協議会の担当者、民生委員等の多様の関係者と面談し、本人の状態(介護度、認知症の種類、障害の有無、手帳の有無、病歴等)を詳しく把握したうえで、身上監護の態勢を整備します。身上監護では周辺関係者とのネットワーク造りが重要になるのです。
 身上監護と同時に財産管理も開始しますが、その際は登記事項証明書で成年後見人の身分を証明します。通常、成年後見人の選任は家裁から法務局に通知され、家裁の審判確定後に成年後見登記は完了していますので、登記事項証明書を取得できるのです。
 成年後見人は、財産管理として、金融機関、保険会社、公的機関(介護保険、健康保険、年金などの所管機関)に対し、成年後見の届出や郵送先の変更などの手続きを行います。また、印鑑、通帳、証書類等の管理を引き継ぎ、収入(年金、家賃、配当、保険金等)を受領・保管し、債務(電気・水道代、電話代等)を支払い、各種契約を締結し、本人の若しくは本人に対する訴訟に対応します。
 さらに、本人が長期間施設に入居する場合に、その入居費用を賄うため、従前の本人の居住用不動産を売却することもあります。
 成年後見人は、本人の身上監護と財産管理を行うと共に、これらの業務を定期的(年1回)に家裁に報告します。
 本人死亡等の業務終了事由が発生すると、成年後見人は家裁にその旨報告し後見終了の登記を自ら行って業務を終了することになります。
 成年後見業務は開始から終了まで相当の年月がかかることから、成年後見人自身の健康管理にも気を付けねばなりません。以上
 

(2024.06)

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