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『日弁連司法シンポジウム(1)』

 拙宅の2本の百日紅は今夏も紅白の花を咲かせています。
 さて、1年前にご紹介しましたが、日本弁護士連合会(日弁連)は、本年11月2日(土)に、第30回司法シンポジウム(本シンポ)を、霞が関の弁護士会館で開催します。本シンポでは2000年代初頭に実現した「司法制度改革の到達点」と「これからの課題」をテーマとして研究成果を報告する予定です。
 リアル出席でもZOOM利用でも無料で参加できますので、ご興味がある方は是非ご参加下さい。
 今回は、千葉県弁護士会が7月26日に開催した本シンポのプレシンポジウム(プレシンポ)をご紹介したいと思います。
 プレシンポで講師に招かれた大阪弁護士会の明賀英樹弁護士(日弁連元事務総長)は、司法制度改革の諸課題のなかで特に裁判官制度を取り上げ、実現できた改革と実現できなかった改革を、ひとつずつ紹介されていました。
 実現できた改革として紹介されたのは「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」(指名諮問委員会)です。
 最高裁を除く下級裁判所(地家裁、高裁及び簡裁)の裁判官は、最高裁が指名した名簿に基づき内閣が任命します(憲法80条1項)。
 裁判官の任期は10年ですが、再任可能です(憲法80条1項)。そして、日本の裁判官は、キャリアシステムといって、司法研修所の卒業と同時に裁判官に任官し、定年退官するとか公証人の仕事を紹介されるとかするまで裁判官の仕事を続けるのが普通です。
 ところが、かつて、わが国では、任命を拒否された司法修習生や再任を拒否された裁判官が続出した時代がありました。拒否の理由が公式に説明されることはありませんでしたが、ブラックボックス的な任命・再任制度の下では、裁判官が自己の良心に基づき独立して職権を行使する(憲法76条3項)ことなどできるわけがありません。
 そこで、司法制度改革では、民間人や弁護士をメンバーに加えた委員会を最高裁の中に設け、簡裁を除く下級裁判所の裁判官の指名を諮問することにしたのです。指名諮問委員会の設置によって合理的な理由のない任官拒否・再任拒否はなくなったと言われています。
 次に、実現できなかった改革として紹介されたのが「最高裁判所裁判官任命諮問委員会」(任命諮問委員会)です。
 長官以外の最高裁の裁判官は内閣で任命しますが(憲法79条1項)、内閣が裁判官の任命理由を詳細に説明したことはありません。任命諮問委員会とは最高裁の裁判官の任命過程を透明化するために考えられた組織です。1957年には法律案までできましたが、審議未了で廃案となりました。司法制度改革でも設置が検討されましたが、結局、実現されませんでした。
 しかし、近年、内閣が恣意的に最高裁の裁判官を任命しているのではないか、最高裁の裁判官が一票の格差といった重要問題でも独自の意見を作らなくなったのではないか、といった批判が起こっています。以上
 

(2024.08)

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