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『第三者委員会(5)』
5月の東京は概ね晴天が続き、庭の草木に水やりが欠かせない季節となりました。
さて、フジテレビ(以下「F社」)の第三者委員会(以下「第三者委」)の調査報告書により、F社元アナウンサー(以下「女性A」)に対する「性暴力」を認定された芸能人(以下「N氏」)の弁護団が反論を開始しました。
N氏の弁護団は、大要、①「性暴力」という表現はN氏の名誉と社会的地位を著しく損なっている、②調査報告書には約6時間に渡ったN氏の事情聴取の内容がほとんど反映されていない、③N氏は当初守秘義務を解除する旨提案していたのに調査報告書にはN氏が守秘義務の解除に応じなかったと記載されている等と主張し、第三者委に対し、関連証拠の開示と釈明を求めています。
そこで、今回は「性暴力」という表現について検討してみます。
第三者委は、調査報告書において、女性AがN氏から「性暴力」の被害を受けたと認定しました。しかし、「性暴力」とは世間一般にはまだ馴染みのない表現です。
第三者委は調査報告書において、世界保健機構(WHO)が「性暴力」(Sexual Violence)を「強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的な行為を求める試み、望まない性的な発言や誘い、売春、その他個人の性に向けられた行為をいい、被害者との関係性を問わず、 家庭や職場を含むあらゆる環境で起こり得るものである。また、この定義における『強制力』とは、有形力に限らず、心理的な威圧、ゆすり、その他脅しが含まれるもので、 その強制力の程度は問題とならない」と定義している…『性暴力』には『同意のない性的な行為』が広く含まれる」と説明しています。
また、第三者委は、わが国でも内閣府男女共同参画局HPや福岡県条例において「性暴力」という表現が同様の定義で使用されているとも解説しています。
これに対し、N氏の弁護団は「性暴力」とは普通の日本人にとって「肉体的強制力」を行使した性行為として凶暴な犯罪をイメージさせる言葉であり、N氏の名誉に大きな影響を与えたと主張しています。N氏自身も従前から一貫して「暴力」すなわち「肉体的強制力」の行使を否定していました。
しかし、この点、第三者委は、N氏が肉体的強制力を行使したとまで認定した訳ではないようです。N氏と女性Aとの間の事案を具体的に検証することは守秘義務の関係でできなかったので、「同意のない性的な行為」があったことまでを認定し、それを「性暴力」という新しい表現で説明したと理解できます。そうだとすると、第三者委と弁護団の事実認定にはそれほど違いはないとも言えます。
ただ、上記のとおり「性暴力」の定義には様々な性的行為が広く含まれています。その中には肉体的強制力の行使もあるので、「性暴力」という表現を何の限定もなくそのまま使用する場合、肉体的強制力の行使まで認定したという解釈や、認定したという誤解を招くという批判も成り立つように思われます。以上
(2025.06)
