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『第三者委員会(6)』

 6月は全国各地で大雨が降ったり異常高温が続いたりしました。地球規模の気候変動をヒシヒシと感じます。
 さて、フジテレビ(以下「F社」)の第三者委員会(以下「第三者委」)は3月末に調査報告書を公表し、①芸能人(以下「N氏」)のF社元アナウンサー(以下「女性A」)に対する「性暴力」、②性暴力はF社の「業務の延長線上」、③F社社員による女性Aに対する「二次加害」等が認定されています。
 上記①「性暴力」については、既にN氏自身が女性Aとの示談成立を公表していることから、両者間に何らかのトラブルがあったことは、それが「性暴力」と表現されるべきかどうかはともかく、事実として認定できると思います。
 しかし、上記②「業務の延長線上」や上記③「二次加害」は、F社による当初の説明とは全く異なる認定です。
 そこで、今回は、そもそも第三者委はどのような基準で事実認定をしているのか御説明したいと思います。
 日弁連ガイドライン(以下「日弁連ガイド」)は、第三者委の事実認定について、第三者委の「自由心証」によること及び「法律上の厳格な事実認定」に止まらず、疑いの程度を明示した灰色認定や疫学的認定を行うことができること等を定めています。
 まず、「自由心証」とは、証拠の評価や信用性については、第三者委が依頼者やステークホルダーの意向に縛られず、自由に判断できるという意味です。上記②と③の事実認定は、F社による当初説明とは全く異なる第三者委独自のものですから、第三者委の自由心証によるものと評価できると思います。
 次に「法律上の厳格な事実認定」とは、証拠から十中八九間違いないと認定できる場合にのみ事実として認定するという意味です。日本の裁判官は裁判においてこの基準で事実認定をしています。
 ところが、日弁連ガイドは、第三者委は必ずしもこの基準で事実認定をする必要はないと規定しています。第三者委の事実認定の自由度を高めたものですが、そうだとすると、第三者委と裁判所の事実認定の基準が異なるため、調査報告書で認定された事実が、必ずしも裁判で維持されるとは限らないということになります。
 N氏と女性Aとの間では既に示談が成立しているので、N氏と女性Aの間で訴訟が提起されることは考えにくいと思います。しかし、F社の株主らがF社の前社長らに対する代表訴訟を提起すると報道されています。また、F社によるN氏や前社長らに対する又はN氏によるF社や第三者委に対する訴訟提起も取り沙汰されています。将来、これらの裁判において、第三者委の認定とは異なる事実が認定される可能性は否定されない訳です。
 要するに、第三者委の調査報告書とは、あくまでそれを受け取ったF社執行部の問題解決の指針でしかなく、関係者の権利義務を最終的に画するものではないのです。以上
 

(2025.07)

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