今年の7月は高温が続いたためか、拙宅の百日紅(サルスベリ)の1本が早めに花を咲かせました。毎年、百日紅の花が咲くと盛夏だなと感じます。
さて、フジテレビ(以下「F社」)の第三者委員会の調査報告書により「性暴力」を認定された芸能人(以下「N氏」)の弁護団は、当該第三者委員会に関連証拠の開示と釈明を求めています。
しかし、この第三者委員会はF社との契約によって組成された組織ですから、調査報告書を作成するために収集した証拠を、N氏の弁護団に開示することは通常ありえません。
また、第三者委員会とは調査報告書を公表したら解散する時限的な組織ですから、第三者委員会としていつまでも釈明することは困難です。
そこで、N氏の弁護団は、今後F社又は第三者委員会を構成した各委員を名誉毀損で訴える可能性があります。
一般論としていえば、F社は第三者委員会を組成して調査報告書を作成・公表させたのですから、仮に調査報告書の内容に誤りがあり、
その結果、N氏の名誉と社会的信用が不当に毀損されたとすれば、N氏に対する不法行為責任が問われることになります。また、第三者委員会の各委員も、自分達が作成・公表した調査報告書の内容に誤りがあり、その結果、N氏の名誉と社会的信用が不当に毀損されたならば、やはりN氏に対する不法行為責任が成立すると考えられます。
ただし、第三者委員会の各委員の責任については、通常の故意・過失があれば不法行為責任を負うという見解と、各委員は、公平中立の立場から証拠を収集して事実認定を行うという一種の司法作用に携わっていることから、裁判所の裁判官と同様に、故意・重過失がなければ不法行為責任を負わないという見解があります。もとより、前者よりも後者の見解の方が、第三者委員会の委員に対する責任追及を難しくします。
この点、東京地判(令和元年(ワ)第20484号損害賠償請求事件・判例集未搭載)は、ある組織の役員だった原告が、当該組織の依頼した第三者委員会の調査報告書の誤った事実認定により精神的苦痛を受けたという理由で、第三者委員会の各委員に対して損害賠償を求めた事案です。
裁判所は、当該第三者委員会の事実認定に誤りはないと判断しましたが、一般論として「第三者委員会において、調査対象者の法的責任に関する判断をした場合において、その前提とした事実の認定やこれに基づく法的判断の内容に明白な誤りがあり、当該誤謬に基づき、当該第三者委員会の委員において故意又は重大な過失がある場合や、第三者委員会の調査・提言の実施の過程において、特定の利害関係者の利益に偏した調査を行うなど、客観、中立性を損なう特段の事情がある場合には、第三者委員会の委員はこれによって調査対象者に生じた損害について、不法行為法上の責任を負う場合があり得る」と判示しました。
この見解は後者の見解を採用したものと考えられ、控訴審である東京高裁でも採用されています(確定済)。以上