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『第三者委員会(8)』
9月も後半になり、東京でもようやく過ごしやすい気候になっています。政府の備蓄米の放出により米価の高騰が収まったところですが、今年の新米の作柄が気になります。
さて、第三者委員会に関連して以前ご紹介した判例(東京地判令和元年(ワ)第20484号損害賠償請求事件・判例集未掲載)の事案は、法人の役員が、当該法人の組成した第三者委員会の報告書の内容が間違っていて名誉を毀損されたとして第三者委員会の委員らを訴えたものでした。
原告役員側の弁護士らは、訴訟提起に際して記者会見を開催し「第三者委員会の委員の法的責任を問う訴訟は全国初だ」と大々的に宣伝したため、当時、この訴訟提起は全国的に報道されました。
しかし、裁判所は、大要、当該第三者委員会の認定に誤りはなかった、また、第三者委員会の委員は認定の誤りに故意又は重過失がなく、その客観性・中立性を損なう特段の事情もなければ不法行為責任を問われない、という判断を示して役員側を敗訴させました。
画期的な判決でしたが、役員側は判決結果を報告する記者会見を開催しませんでした。
実は、この裁判では、第三者委員会の委員側から、記者会見における役員側の言動が名誉毀損に当たるとして、反対に損害賠償請求訴訟が提起され、この裁判でも役員側は敗訴していたのです。
一般論として、事案の性質にもよりますが、弁護士は訴訟提起や勝訴・敗訴判決に際して記者会見を開催することがあります。
通常、弁護士は、予め発言内容を慎重に吟味し、記者会見では関係者の名誉毀損に該当するおそれのある断定的な発言を回避するように配慮しています。
また、訴状には原告の主観的な主張が記載されているものなので、訴状記載の内容がそのまま事実として報道されないように、訴状そのものではなく要約版を配布することが通常行われています。
しかるに、この裁判の控訴審(東京高判令和3年(ネ)第3202号各損害賠償請求控訴事件・判例集未掲載)では、役員側が開催した記者会見における役員側の代理人の発言や、そのまま配布された訴状の写しの記載内容が、第三者委員会の委員らの名誉を毀損するものと認められてしまったのです。
東京高裁は、第三者委員会の委員が「さしたる根拠もなく独立性を欠いていたと批判されたものである…本委員会は、第三者委員会として本件法人から独立した立場で専門家としての知見と経験に基づいた提言をする役割を負っていたにもかかわらず、これに反する偏った判断をしたと指摘され、提訴された事実が広く報道されたことが認められる」と指摘しています。
なお、いずれの裁判も最高裁で上告棄却となり、役員側の敗訴が確定しています。したがって、現状では、第三者委員会の委員を訴えて勝訴することは相当難しいと思います。以上
(2025.10)
