トピックス

『第三者委員会(9)』

 10月になり、急に朝晩冷え込むようになりました。しかし、猛暑の影響で、庭の小さな「もみじ」の葉がチリチリに枯れてしまい、今年は紅葉にならないようです。
 さて、フジテレビ(以下「F社」)は、8月28日、某芸能人のF社元アナウンサーに対する性暴力事件の処理に関与した当時の社長と専務に対し、損害賠償請求訴訟を提起しました。
 以前ご説明しましたとおり、F社の第三者委員会の調査報告書とは、それを受け取ったF社執行部の問題解決の指針でしかなく、関係者の権利義務を画するものではありません。
 そのため、F社では、第三者委員会の調査報告書を受け取った後、さらに当時の役員らの法的責任について外部の法律事務所に分析業務を委任して検討し、当時の社長と専務に対し、会社法423条第1項に基づき50億円の損害賠償請求訴訟を提起したとのことです。
 会社法423条1項は、取締役の任務懈怠に基づく会社に対する損害賠償責任を規定しています。F社は当時の社長と専務に任務懈怠があったと主張している訳です。
 とはいえ、50億円とは、当時の社長と専務だったとはいえ、個人に対する損害賠償請求金額としては大き過ぎ、回収可能性があるのか疑問です。
 他方で、F社では、この事件のため、6月末までに約453億円もの損害が発生していて、50億円はその一部に過ぎないとのことです。また、上場企業の取締役は、通常、役員賠償責任保険に加入しているので、当時の社長と専務もこの種の保険に加入していれば、保険の上限金額までは回収可能とも言われています。
 もっとも、第三者委員会と裁判所の事実認定の基準は異なりますから、第三者委員会の調査報告書で認定された事実が、必ずしも裁判で認定されるとは限りません。そのため、今回、F社は、新たに外部の法律事務所に分析業務を委託し、その結果に基づき訴訟提起したと説明しています。
 ただし、この説明通りとすると、F社は一つの法律事務所の見解に基づいて訴訟提起したことになります。しかし、会社にとって重要な訴訟を提起する場合、通常は複数の法律事務所に意見を聞くはずです。その辺りの背景事情までは明らかにされていませんが。
 もちろん、被告側が争うのか、争うとしてもどこまで争うのかは、現時点で分かりません。例えば、保険金の上限までは責任を認めて和解し、破産を回避するという中間的な選択も考えられます。
 いずれにしましても、いったん本格的な第三者委員会を組成して組織内部で責任追及が始まると、F社のように、組織の誰かが破滅しかねないほど追い詰められることがあります。不祥事を起こした会社の役員らが第三者委員会の設置を渋る気持ちも分かります。以上
 

(2025.11)

インデックス

このページの先頭へ