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「憲法の役割について(その3)」

10月に福井市で開催された日本弁護士連合会(日弁連)の第59回人権大会において、立憲主義の回復、死刑廃止、主権者教育の推進という3つの宣言が採択されました。死刑廃止に関する宣言については新聞等で大きく取り上げられたのでご記憶されているかもしれません。
 日弁連のイベントは、大抵、暑い季節は暑い地方で、寒い季節は寒い地方で行われます。しかし、今年は秋の福井市でしたので、全国から大勢の弁護士が参加しました。
 福井市といえば「ソースカツどん」や「おろしそば」と並んで「越前ガニ」が有名です。ところが、カニ漁は11月から解禁なので、今回は全く食べられませんでした。日弁連のイベントは、旬を外して行われることを忘れていました。
 立憲主義の回復に関する宣言は「憲法の恒久平和主義を堅持し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言」という長いタイトルですが、死刑廃止と異なり、こちらは全会一致で採択されました。
 内容は、大要、①平成25年12月に成立した特定秘密保護法と、昨年9月に成立した安保法制は、政府による他の諸施策と共に、憲法が定めた恒久平和主義を危機に陥らせている、②平成26年7月の閣議決定により、従来の憲法9条の解釈を覆して安保法制の基本的部分(集団的自衛権の行使容認等)を定めたことは、憲法9条に違反し、立憲主義・民主主義に反する、③司法は法の支配の担い手として、安保法制の運用の結果人権侵害が生じた場合は積極的な役割を果たすべきであり、また、立憲主義が破壊されようとしている今こそ、裁判手続を通じて立法府と行政府の誤りを正し、立憲主義と憲法秩序を回復する責務がある、との内容です。
 この宣言に対する世間的な評価は肯定的なものから否定的なものまで様々だと思います。ただ、今回採択された上記宣言は、越前ガニとは異なり、旬を外していないように思いました。というのは、7月の参議院議員選挙の結果、衆参両院で3分の2以上を占めた与党側が、いよいよこの秋から「憲法審査会」を開催することを決めたからです。
 憲法審査会とは、憲法改正原案や憲法改正発議を審査する機関で、衆参両院に設けられており、衆参双方で議論することになります。
 報道によると、憲法改正を目指す与党側は、今のところ「自党の憲法改正草案には拘らない」、「白紙で議論に臨む」、「野党と協調する」等とマイルドな発言に終始しています。これに対して野党側は「現行憲法が対案」等と改正議論自体に慎重です。
 与野党とも、国民投票で「過半数の賛成」(憲法96条1項)を得られるかどうかが最終的な勝負所と認識しているでしょうから、憲法審査会では国民の目線を意識しながらの議論になると思われます。以上

(2016.11)

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