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「憲法の役割について(その1)」 VOL311

 東京は7月28日にようやく梅雨明けしましたが、今年は雨が少なく気温も上がらず過ごしやすい日々が続きました。8月以降の水不足は心配ですが、丁度、参議院議員と都知事の選挙があり、選挙運動には都合がよかったかもしれません。
 選挙のテーマの一つとして、憲法改正問題が挙げられていました。
憲法を改正するためには、衆議院と参議院の総議員の3分の2以上の賛成によって国会が発議し、国民に提案して過半数以上の賛成を得なければなりません(憲法96条)。
 今回の参議院議員選挙の結果、改正に賛成する議員が参議院の総議員の3分の2以上を占めました。すでに要件を満たしている衆議院と共に、今後、憲法改正発議に向けた活動が開始されると思います。都知事選挙でも、改正反対派の著名人が落選し、今のところ世論上の障害は大きくないようです。
 憲法は1946(昭和21)年11月3日に公布され、1947(昭和22)年5月3日に施行されました。11月3日は「文化の日」、5月3日は「憲法記念日」と、両日とも国民の祝日です。戦後のわが国の再生にとって極めて重要な法典と考えられていたことが分かります。
 現行憲法は、旧憲法の改正手続を経て成立しました。しかし、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義という3つの理念を柱としており、旧憲法の枠を超えていることは明らかです。
 憲法の制定以来、自主憲法の制定、再軍備の容認、首相公選制の導入、新しい人権(環境権、プライバシー権等)の創設等、改正を目指す多くの意見が世に問われてきました。しかし、憲法は、施行から70年間一度も改正されたことがありません。
 もっとも、憲法の条文は全部で103条しかなく、文言も抽象的なので、これまで様々に解釈・運用されてきました。特段憲法を改正しなくても、柔軟に意味内容を変化させてきた訳です。
 しかし、国の最高法規である憲法には、その条項に反する法律、命令その他の国務行為の効力を否定する効力があります(憲法97条)。そして、最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する終審裁判所と規定されています(憲法81条)。従って、最高裁は、いわゆる「憲法の番人」として、イザという場合には果敢に違憲(憲法違反)判断を示さなければなりません。
 最高裁は、戦後の70年間に10件の法令違憲(法令自体が違憲)と12件の適用違憲(当該事件に適用する限り違憲)の判断を下しています。最高裁の法令違憲判断には、①身分制度関係(尊属殺重罰、非嫡出子国籍取得制限、非嫡出子法定相続分、女子再婚禁止期間)、②選挙権関係(議員定数不均衡2件、在外邦人選挙権制限)、③その他(薬事法距離制限、森林法共有分割制限、郵便法免責)が含まれています。
 憲法が施行された1947年から1999年までの52年間にわずか5件だった法令違憲判断が、2000年以降17年間に5件も下されていることに、近年関心が集まっています。以上

(2016.08)

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