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「2017年の課題」 VOL316
2017(平成29)年を迎え、皆様のご健康とご多幸を祈念致します。
昨年は、アメリカ大統領選挙で、予想外のトランプ氏が当選したり、イギリスの国民投票で、まさかのEU離脱が選択されたりと、アングロ・サクソン系の民主国家で驚くべき民意が示されました。
アジアでも、韓国の朴大統領が国民の大規模デモの圧力下で弾劾の危機に直面していますし、わが国の舛添元都知事も、政治資金問題に対する世論の反発で辞職に追い込まれました。後任の都知事選では、与党の一員だった小池氏が、世論の後押しを受けて大差で当選し、かつての仲間達と対峙しています。新潟県、鹿児島県、沖縄県等においても、既存の政治路線と対立する知事に住民の支持が集まっています。
これらに共通するのは、直接民主主義の発現、すなわち、実在する民意の反映だと思います。もっとも、平時における民意は多種多様かつ移り気で、具体的に把握しがたいものです。しかし、移民、基地、原発、築地、五輪等何らかの具体的テーマを提示し、○×式の選択肢を与えると、民意は案外明確に一定の方向性を示すことが上記諸事例で示されています。もちろん、民意が常に正しいとは限りませんが、上記諸事例を見る限り、民意を創り民意に乗ることが直接民主制において生き残る鍵だと思います。
今年は、いよいよ憲法改正の国民投票(憲法96条1項)の実施可能性が高まります。現在は両院の憲法審査会で議論していますが、憲法改正を目指す勢力としては、両院で改憲派が3分の2以上を占める今こそ憲法改正を発議するチャンスなのです。もちろん、ここでも、改憲派と護憲派のどちらが実在する民意を掴めるかが重要な鍵となるでしょう。この点、昨年から18歳と19歳の有権者約240万人に投票権が与えられていますが、敗戦を経験した昭和の価値観に囚われない平成世代の有権者の割合の増加は、どちらにとって有利な要因となるのか気になるところです。
価値観の変化といえば、終身雇用制、年功序列制、企業内組合を、いわば「三種の神器」とした昭和世代にとって、最も重要なのは雇用維持と賃上げでした。他方で、長時間労働は、企業の成長と賃金上昇を支えるテコとして、ある意味容認されてきた感があります。
しかし、昨年発生した電通過労死事件は、かかる価値観がもはや通用しないことを明らかにしました。電通といえば「鬼十則」等厳しい労働環境で有名ですが、昭和世代にとってあこがれの就職先の一つでした。平成世代にとっても同様だったと思いますが、厳しさを通り越して過労死にまで至るとなると話が違うと言わざるを得ません。同事件ではパワハラやセクハラも報道されていますが、労働基準を軽視する古い体質自体が批判されていると思います。
同事件に対する世論の関心の高まりを受け、厚労省は、昨年末、違法な長時間労働を放置する企業名の公表基準を、月100時間超から月80時間超に厳格化する等の緊急対策をまとめました。
今年は労基署の調査や摘発がより厳しくなると予想されます。労働基準遵守の風潮は、まさに価値観の変化といえそうです。以上
(2017.01)