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労働時間規制(その3) VOL319
3月13日、日本経済団体連合会(経団連)と日本労働組合総連合会(連合)は、時間外労働の上限規制等に関する合意に達しました。同月17日には、政府の働き方改革実現会議に対し、経団連と連合に、内閣官房と厚労省も加わり「政労使」の形式で上記合意の内容が提案されています。かかる提案が実現会議の今後の取りまとめの骨子になるものと思われます。
合意・提案に参加した当事者は、罰則付きの時間外労働の上限規制を導入したことは「労働基準法70年の歴史の中で特筆すべき大改革」であると自画自賛しています。他方で、法律が合意・提案を採用すれば、従前の司法判断よりも過酷な時間外労働が正当化される虞があるとの批判もあります。そこで、今回は、政労使の提案の内容をご紹介したいと思います。
提案は、まず、時間外労働の上限規制について、原則として月45時間、かつ、年間360時間とし、違反には「特例」を除いて罰則を課すと定めています。
「特例」に関しては、〇臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする、かつ、〇年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限上回ることができない「上限」を設けることとしています。
そして「上限」については、①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならない、②単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならない、加えて、③時間外労働の限度の原則が月45時間かつ年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう年6回を上限とする、と定めています。
提案が原則、特例、上限という3重構造なのは、現在の規制体系と変わりません。しかし、現在の原則である厚生労働大臣告示を労基法の規制に格上げし、その違反に対しては、特例を除いて罰則を課すことになる点で、より厳しい規制であることは確かです。
しかし、単月であっても、労災認定基準である月100時間近くの時間外労働が許容されるなら、労働者が病気になるまで働かせてよいと理解されても仕方ないところです。
そのためか、提案は、労使には上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労基法に指針を定める規定を設け、行政官庁は、当該指針に基づき、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにすると定めました。現在の告示のような罰則のない規制を設け監督官庁が労使を指導していく趣旨かと思われます。
その他、提案は、パワハラ防止対策、メンタルヘルス対策、勤務間インターバル制度の促進等を挙げるとともに、5年後見直し条項の挿入を求めています。
我が国の働き方改革が本当に実現するのかどうか、今後も注目していく必要があります。以上
(2017.04)