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「裁判官の任命について(その2)」
先月22日、台風の中で衆議院議員選挙が行われました。
今回の選挙では、直前に野党が分裂してしまい、投票の直前まで、どこの党の誰に投票しようかと思案された方が多かったと思います。
そういう気分の時に、投票所で「最高裁判所裁判官国民審査」の投票用紙を渡されても、あまり興味は湧かなかったかもしれません。投票用紙に記載された裁判官の名前(今回の審査対象7名)を見ても、ほとんどの方は、何も思い浮かばなかったのではないでしょうか。
意識の高い方は、あらかじめ広報を見たり、ネットで情報を集めたりしていたかもしれませんが、筆者を含めてそうで無い方にとっては、その場で適否を判断するしかありません。せめて、各裁判官の顔写真、経歴、関与した主な判決位は投票所かその周辺に掲示して欲しいと思います。
それでも、今回から、国民審査と衆議院議員選挙の期日前投票期間が同一になり、国民審査の投票機会は増したようです。しかし、現状では有意義な制度なのかどうか、疑問も生じています。
この点、そもそも、最高裁判所は1人の長官と14名の裁判官で構成されます(憲法79条1項)。そして、最高裁長官は、内閣の指名に基づいて天皇に任命され(同6条2項)、他の裁判官も内閣が任命します(同79条1項)。つまり、最高裁の裁判官の人事権は内閣が独占的に握っていて、任命に国民の意思が反映されないために、国民審査という特別の制度が導入されているのです。
もっとも、議院内閣制においては、与党により組織された内閣が民意を反映しているといえます。しかし、与党を支持した民意は様々で、そこに最高裁裁判官の人事に関する意思まで読み取ることは困難です。また、選挙時と指名・選任時とでは時間差があり、内閣の指名・選任が、その時点における民意を反映しているとも思えません。しかも、内閣が政治的・恣意的に指名・選任する虞もあります。つまり、国民審査には、内閣による人事権の濫用を監視する機能があるといえるのです。
その国民審査とは、最高裁の裁判官に対して、任命後初めて行われる衆議院議員選挙の際と、その後10年経過した後初めて行われる衆議院議員選挙の際に行われるもので、対象裁判官について過半数が罷免を可とする場合に、当該裁判官が罷免される制度です(同79条2項、3項)。
いわゆる解職(リコール)制度ですから、罷免を相当と考える裁判官の氏名欄に×印を付ける方式で、任命を可とする裁判官の氏名欄に〇印を付ける方式ではありません。
もっとも、よほどのことがない限り、有権者の過半数が特定の裁判官に×印を付ける事態は考えにくく、これまで国民審査で罷免された裁判官は一人もいません。
ちなみに、通例、×印が一番多いのは、投票用紙の最初に氏名欄のある裁判官だそうです。今回も投票用紙の最初に氏名が記載されていた裁判官に対する×印が一番多く、468万8017票で全体の8.56%でした。しかし、この裁判官の経歴や関与した判決に特段問題があると聞いたことはありません。以上
(2017.11)