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『地域司法について(2)』

 今回は4月21日に神奈川県の藤沢市で開催された地域司法に関する交流会をご紹介したいと思います。 
 藤沢市は、東京駅から東海道本線で約50分、神奈川県南部に位置し、相模湾に面した人口約43万人の都市です。いわゆる「湘南」と呼ばれる地域の中央にあり、まだ4月というのに、駅のホームではサーフボードを抱えた乗客が何人か目に付きました。
 今回の交流会は、神奈川県弁護士会、関東弁護士会連合会及び日本弁護士連合会の共催で開催されたもので、関東各地の裁判所支部の人的物的体制の充実を訴えるという企画です。前回もご説明しましたが、地方における司法制度は医療制度と並んで地域住民の重要なライフラインです。そこで、当日は地元選出の国会議員や自治体関係者も多数参加していました。
 交流会では、藤沢市や茅ヶ崎市等5市1町(藤沢地区)を管轄地域とする地元の裁判所は藤沢簡易裁判所しかないこと藤沢地区(合計人口約116万人)において地家裁に提起する事件の管轄裁判所は横浜地家裁本庁であること、藤沢地区から本庁まで約45分~75分かかること、本庁の管轄地域は藤沢地区のほか、横浜市と鎌倉市があること(合計人口約506万人)、本庁の家事事件数は増加の一途であること(平成元年1万547件、平成28年3万7504件)、藤沢地区では、藤沢簡裁に家裁出張所を新設して藤沢地区の家事事件を地元で扱うように求めていること等が報告されました。
 簡裁に併設されている家裁出張所は実際に全国に77か所あり、藤沢地区の管内人口の多さや、激増している本庁の家事事件数を踏まえると、合理的な提案と思われました。
 交流会では、このほか、関東各地における同様の運動の紹介、昨年4月から労働審判(申立から原則3回で労働紛争を解決する新しい制度)が導入された3支部(静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部)管内における弁護士会の労働事件掘り起こしへの取り組み、上記3支部における労働審判事件数等も報告されました。
 このうち、上記3支部における労働審判事件数は、3月時点でどこにも公表されていませんでした。そこで、国会議員が国会でこの件を質問し、最高裁から、昨年4月から12月までの労働審判事件の新受件数は浜松支部23件、松本支部14件、福山支部8件との開示を受けたのです。
 ちなみに、現在、全国で50の地裁本庁と5つの支部で労働審判事件を取り扱っており、昨年1月から12月までの間に新受件数が一番多かったのは東京地裁(976件)、一番少なかったのは高知地裁(5件)とのことでした。
 地域住民の裁判を受ける権利を実質的に保障するため、簡裁に家裁出張所を新設したり、裁判所支部に労働審判を導入したりする必要性は十分理解できます。他方で、これらを実現するためには相当の司法予算を必要としますし、全国一律一斉にという訳にもいかないでしょう。
 実現に向けた地域住民の熱意と、従前の管轄裁判所の不便性や予想される事件数の動向といった冷静な分析の両方が必要になると考えた次第です。以上
 

(2018.05)

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