トピックス
『同一労働同一賃金(その2)』
政府が通常国会に提出した「働き方改革関連法」(以下「関連法」といいます。)が6月29日に可決成立し、7月6日に公布されました。関連法には前回ご説明した「同一労働同一賃金」原則の強化が含まれています。
わが国において「同一労働同一賃金」原則とは、概ね、同一の労働に対しては、同一の賃金が支払われるべきであるという原則と理解されており、従前から労基法第3条及び第4条、労働契約法第20条、短時間(パートタイム)労働者法第9条、労働者派遣法第30条の3等により、別々の形で規定されていました。
関連法は「同一労働同一賃金」原則を特に、正規労働者と非正規労働者(短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間の労働条件の不合理な差別の解消という観点から把握し、従前の規定を改正しています。
具体的には、労働契約法第20条を削除し、短時間労働者法の正式名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と改めた上で、まず、短時間労働者・有期雇用労働者と労働条件を比較される正規労働者を「同一の事業所に雇用される普通の労働者」から「同一の雇用主に雇用される普通の労働者」に拡大しました。
また、考慮事情としては従前と同様に①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を挙げていますが、比較される待遇について、より詳細に「基本給、賞与その他の待遇」と規定しています。ここでいう「その他の待遇」には手当や休日等が含まれると理解されています。
さらに、関連法は、短時間労働者や派遣労働者と同様に、有期雇用労働者についても、雇用主に対し、雇入れ時の待遇内容の説明義務や、労働者から求められた場合における、待遇決定時の考慮事情の説明義務を課しています。
他方で、関連法は、派遣労働者について、従前、派遣労働者法において規定されていた派遣労働者と派遣先労働者の賃金水準の均等待遇と、派遣労働者と派遣元との労使協定による処遇の選択制を認めることにしました。これは、派遣労働者の賃金水準が派遣先によってまちまちであることから、場合により、派遣労働者の賃金水準が不安定化するとの指摘に応えたものです。
さらに、関連法は、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続の整備として、不合理な待遇の相違の禁止に関する苦情及び紛争について、行政(都道府県労働局長)による助言・指導・勧告を実施し、さらに裁判外紛争解決手続(行政ADR)を利用できることにしました。
この「裁判外紛争解決手続」が、どのような組織と手続で行われるのかは不明ですが、紛争調整委員会(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条1項)における従前の「あっせん」手続や新たな調停手続を設けるのではないかといわれています。
なお、関連法のうち「同一労働同一賃金」原則に係る規定は2020年4月から施行されますが、中小企業は2021年4月からとなります。以上
(2018.08)