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『同一労働同一賃金(その3)』

 6月29日に可決成立し、7月6日に公布された「働き方改革関連法」には「同一労働同一賃金」原則の強化が含まれています。
 関連法は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の労働条件の「不合理な待遇差」の解消という観点から、既存の法律の規定を改正したところです。
 もっとも、関連法を見ても「同一労働同一賃金」という文言が明示されている訳ではありません。また「不合理な待遇差」の解消といっても、具体的にどのような待遇差が不合理と判断されるのかは判然としません。
 そのため、すでに政府は、平成28年12月20日に開催された「働き方改革実現会議」において「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表し、関連法の施行日までに内容を確定して施行することにしています。関連法の施行日までには政府案が拡充・改訂されると思われますが、今回は当時公表された政府案の内容を一部ご紹介したいと思います。
 まず、政府案は、同一企業・団体における正規雇用労働者と有期雇用労働者・パートタイム労働者の基本給、手当(賞与、役職手当、時間外労働手当、精皆勤手当等)、福利厚生(更衣室、社宅、病気休職等)、その他(教育訓練・安全管理等)について一般的なガイドラインを掲げた上で、具体的に「問題とならない例」と「問題となる例」を示しています。
 政府案では、労働者の「基本給」について、当該企業・団体が労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとしている場合は、正規雇用労働者と同一の職業経験・能力を蓄積している有期雇用労働者・パートタイム労働者には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の支給をしなければならず、蓄積している職業経験・能力に一定の違いがある場合も、その相違に応じた支給をしなければならないとのガイドラインが掲げられています。
 また、この場合の問題となる例として、正規雇用労働者Xが有期雇用労働者Yに比べて多くの職業経験を有することを理由としてXに対してYよりも多額の基本給を支給しているが、Xのこれまでの職業経験はXの現在の業務に関連性をもたないというケースが示されています。
 次に、「基本給」を、労働者の勤続年数に応じて支給しようとする場合は、正規雇用労働者と同一の勤続年数である有期雇用労働者・パートタイム労働者には、勤続年数に応じた部分につき、同一の支給をしなければならず、勤続年数に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければならないとのガイドラインが掲げられています。
 また、この場合の問題となる例として、有期雇用労働者Yに対し、勤続年数について当初の雇用契約締結開始時から通算せずその時点の雇用契約の期間のみの評価により支給しているというケースが示されています。
 なお、政府案では、派遣労働者について、派遣元事業者は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練を実施しなければならないとの概ね関連法と同趣旨のガイドラインが掲げられていますが、問題となる例等はまだ示されておらず、今後拡充されるものと思われます。以上

(2018.09)

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