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『裁量労働制(その3)』

 これまでご紹介した「裁量労働制」とは別に、労基法には、労働時間の算定が困難な施設外労働のために、労働時間の「みなし」制度があります。
 例えば、外勤の営業職員や取材記者のような、事業場外の労働が常態化している職種や、出張のような、臨時的な事業場外の労働については、労働時間の正確な把握が困難です。そこで、これらの職種や労働については一定の時間労働したものと「みなす」ことにするのです。
 この事業場外労働の「みなし」制度は、もともと省令で規定されていましたが、「裁量労働制」を採用した1987年改正労基法により、本則で整備されることになりました。
 労基法38条の2第1項は、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事する場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものと「みなす」と規定しています。
 ここで「労働時間を算定し難いとき」とは、事業場外で行われる労働のうち、当該労働の態様のために、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難である場合と理解されています。
 そこで「事業場外で業務に従事」していても、グループで労働する際に、グループのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合や、単独で労働する際に、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働しているとか、予め事業場内において当日の訪問先や帰社時間等について具体的な指示を受け、事業場外において指示通りに業務に従事して事業場に戻るという場合には、労働者に対して使用者の具体的な指揮監督が及んでおり「みなし」労働時間制度の適用はないと解されています。
 また、判例によれば、旅行会社が企画する各種ツアーの添乗員に関して、当該添乗員が旅行会社からツアーの出発から帰着までの間の行程と管理の仕方を指示されていて、これをできるだけ順守しなければならず、変更の必要が生じた場合には旅行会社へ連絡・相談しなければならない等といった事情がある場合には「労働時間を算定し難いとき」には該当しないとのことです。
 次に、労働したものとみなされる「所定労働時間」について、労基法38条の2第1項但し書は、当該業務を遂行するためには、通常の所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合、省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされると規定しています。
 また、同条第2項は、上記但し書の場合について、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、かかる労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間をもって、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とすると規定されています。
 さらに、同条第3項並びに規則24条の2第3項及び第4項は、協定で定める時間が8時間を超える場合には、当該協定を労働基準監督署長に届けるべき旨(ただし、36協定に付記すれば足りる。)規定しています。以上 
 

(2018.12)

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