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『裁判員制度10周年(1)』

 皆様は裁判員として刑事裁判に参加した経験をお持ちでしょうか。
 裁判員制度は本年5月21日に施行10周年を迎えました。これを記念して各地の裁判所では様々なイベントが開催されています。
 刑事裁判のうち殺人、強盗致死傷、現住建造物放火等のいわゆる重罪事件が裁判員裁判に付されます。裁判員裁判の審理は原則として裁判官3人と裁判員6人により行われますが、被告が争わない場合は裁判官1名と裁判員4名で審理できます。
 裁判員制度が導入されたのは、市民が刑事裁判に参加して、市民の視点や感覚を司法に反映させるためです。しかし、1923年から1943年までの短い期間を除き、わが国において裁判に欧米流の市民参加制度を採用したことはなく、施行当初は危惧感もありました。
 しかし、この10年で約1万2000件の裁判員裁判が行われ、約9万1000人の市民が裁判員や補充裁判員として刑事裁判に参加しました。裁判員の選任手続に  参加した人は約34万人、裁判員候補者に該当した人は約290万人に上ります。もはや裁判員制度はわが国の刑事司法に深く根付いていると言ってよいでしょう。
 最高裁判所は、裁判員経験者に対してアンケートを実施しています。2017年度のアンケートにおいて「裁判員に選ばれる前の気持ち」について「積極的にやってみたい」と「やってみたい」との回答は合計約37%だったのに対し、「あまりやりたくなかった」と「やりたくなかった」との回答は合計約47%と、参加に消極的な方が多かったのです。
 ところが「裁判員として裁判に参加した感想」では「非常によい経験と感じた」と「よい経験と感じた」との回答が合計約96.3%になっています。つまり、最初は裁判員への就任に不安や不満を持っていても、裁判員裁判に参加した後は、ほとんどの経験者が肯定的な評価をしているのです。
それにもかかわらず、現在、裁判員候補者の辞退率は約67%、辞退はしなかったものの選任手続を欠席した人は約3割に上ります。しかも、その割合が徐々に増えているのです。
 裁判員候補者の辞退率上昇と出席率低下について、最高裁判所は平成29年3月付の原因分析業務報告書を公開しています。これは、裁判員裁判の統計資料と国民一般を対象としたアンケート調査を基に、最高裁がNTTデータ経営研究所に分析業務を委託したものです。
 この報告書では、裁判員制度の現在の運用に由来する事情のほか、国民の高齢化の進展や裁判員制度に対する関心の低下等といった、より根深い事実も原因として挙げられています。以上

(2019.06)

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