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『新型コロナウィルス(1)』
新型コロナウイルスの国内流行が懸念されています。
先月までは、中国の武漢を中心とする湖北省に渡航歴のある人や、その濃厚接触者に感染が見つかった程度でした。
ところが、2月に入ると、湖北省とは関係がない病院の医師・看護師等に感染者が見つかり、続いて横浜埠頭に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号内での大規模な集団感染が報道され、今では全国各地で多数の感染者が報告され、その数は日々増加しています。
政府は、2月25日、企業に対して従業員に休暇取得、時差通勤、テレワーク等を奨励するよう、2月26日、今後2週間にわたり全国的なスポーツ、文化イベント等を中止・延期等するよう、2月27日、全国の小・中学校及び高校等に対して春休みまで臨時休校するよう、次々に要請する事態となりました。
そこで、今回は、新型コロナウイルス感染防止のために、企業が従業員を休職させたり、従業員が休業したりした場合の従業員給与の取扱いについてご説明致します。
まず、新型コロナウイルスの感染が確認された従業員の場合、新型コロナウイルスは2月1日付で指定感染症になっているため、当該従業員は都道府県知事から就業制限や入院の勧告等を受けます。
したがって、当該従業員は就業できませんが、その感染原因が私的なものであって「使用者の責めに帰すべき事由による休業」(労基法26条)に該当しない場合、企業は就業規則等に特段の規定がない限り、休業手当(平均賃金の60%以上)を支給する必要はありません。
ただし、当該従業員が被用者保険(健康保険)に加入していて、一定の要件を満たせば、当該従業員は健康保険から傷病手当を受領できます。傷病手当は標準報酬月額の平均の3分の2です。
他方で、業務上の原因で感染した場合(湖北省からの観光客が搭乗したバス運転手・バスガイド、新型コロナウイルスに感染した患者を診察した医師や看護師等)、企業は「使用者の責めに帰すべき事由による休業」として休業手当を支払う必要があります。さらに、業務起因性が認められれば、労災認定がなされる可能性もあります。
次に、新型コロナウイルスに感染しているかどうか不明だが、家族が感染している等、感染の疑いがある従業員が、自発的に休業する場合、企業は就業規則等に特段の規定がない限り、休業手当を支払う必要はありません。ただし、この際、従業員が有給休暇の取得を申請してきたら、特段の事情がない限り、有給休暇の取得を認めなければなりません。
他方で、企業としても、職場で病気が蔓延しては困るので、強制的に自宅待機に付すると思います。これは企業側の都合による休職なので休業手当を支給する必要があります。
結局、就業規則等に特段の規定がない限り、企業と従業員が話し合い、従業員が有給休暇を選択すれば企業は給料を満額支払う、有給休暇を選択しない従業員に対しては休業手当を支払うというあたりに落ち着きそうです。以上
(2020.03)