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『改正民法の要点(5)』
10月になり、散策や旅行に適した季節となりました。
今月はたまたま福岡、名古屋、仙台に出張したのですが、東京から出発する飛行機や新幹線がかなり混んでいることに驚かされました。新型コロナの蔓延で外出を控えていた東京都民が、Go・To・トラベルの解禁で、一斉に団体・家族旅行に出かけているようです。インバウンド観光客が途絶えた観光地では、昭和の観光ブームの再来で、一息つけているのではないかと思います。
とはいえ、団体旅行のクラスター化も報道されており、この秋から冬にかけて新型コロナとインフルエンザのダブル流行が懸念されてもいます。
さて、これまで4回にわたって改正民法の「保証」についてご説明申しあげましたが、今回から、改正民法の「消滅時効」についてご説明して参ります。
そもそも「時効」とは一定の事実状態が継続している場合に、その事実状態をそのまま権利関係として認める制度です。現在の事実状態が真実の権利関係と一致するかどうかを問いません。
時効には、事実状態の継続を根拠に権利者とみなす「取得時効」と、権利を行使しない状態を根拠に権利を消滅させる「消滅時効」とがあります。
旧法下において、債権の消滅時効期間は原則10年、例外として商事債権は5年、特殊な職業別債権(医師・助産婦の診療報酬、弁護士・公証人の報酬、飲食料・宿泊料、席料・入場料など)は1年~3年でした。
しかし、例外が多過ぎて複雑で分かりにくい、職業別債権の短期消滅時効は現代のわが国において合理性はないなどといった批判が有力でした。
そこで、今回の改正において、商法と職業別の消滅時効の例外はすべて廃止し、債権については一律に権利を行使することができるときから10年、そのことを知ったときから5年のどちらか短い方の経過によって消滅時効が完成することになりました(民法166条1項)。
売買代金・飲食料・宿泊料などの債権は、権利を行使することができるときとそのことを知ったときとは通常一致します。つまり、5年で消滅時効にかかることになります。
他方で、例えば、消費者金融の過払金(法定利率を超えて利息を支払い過払になっている債権)の返還請求権は、客観的に権利行使できるときと、主観的に過払を知ったときとは異なることが普通です。つまり、5年を超えて請求することもあり得ます。
なお、債権又は所有権以外の権利(地上権・永小作権・地役権など)の消滅時効期間は従前のとおり20年です(166条2項)。所有権は消滅時効にかかりませんが、他人の取得時効の完成によって失われることはあり得ます。担保物件も独立して時効消滅しませんが、被担保債権が消滅時効にかかれば共に消滅します。形成権や抗弁権も独立して消滅時効にはかからないと解されています。
また、確定判決によって確定した権利の消滅時効期間も従前のとおり10年です(169条)。以上
(2020.11)