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『改正民法の要点(6)』
11月は全国的に晴天に恵まれGo・To・トラベルの支援もあって、多くの市民が旅行を楽しむ季節となりました。
しかし、新型コロナの全国的な蔓延に繋がりかねないGo・To・トラベルは、そろそろ一休みしてよいかもしれません。
さて、前回から改正民法の「時効」についてご説明しています。前回ご説明したとおり、「時効」とは、一定の事実状態が継続している場合に、その事実状態を権利関係として認める制度です。
そこで、事実状態の継続が途切れた場合に時効はどうなるのかという問題があります。
この点について、旧民法には、時効の「中断」と「停止」という2つの類型がありました。
まず、時効の「中断」とは、時効の進行中に、時効を覆す事情が生じたことを理由として、それまでの時効期間の経過をなかったことにするものです。当該事情として請求、差押・仮差押・仮処分、承認の3つが挙げられていました。
また、時効の「停止」とは、天災などの障害事由により時効の中断ができない場合、時効の完成によって不利益を受ける者を保護するため、当該障害事由の消滅後一定期間経過するまで、時効の完成を延期するというものでした。
しかし、例えば、法律では、時効の中断事由である「裁判上の請求」により時効は中断しますが、これが却下や取下げで終了した場合は時効の中断は生じないと規定されていました(旧149条)。ところが、判例は「裁判上の催告」という考え方を認め、却下や取下げで終了後6カ月以内に正式な時効中断手段をとれば時効は中断することにしたのです。しかし、これでは例外に例外を重ねることになり複雑で分かりにくいですし、条文を見ただけでは分からないという批判がありました。
そこで、改正法は、時効の「中断」と「停止」という2類型を廃止し、代わりに時効の「更新」と「完成猶予」という概念を用いることにしました。
すなわち、改正法は「裁判上の請求」について、確定判決などにより権利が確定することなく当該請求が終了した場合は、その終了時から6カ月経過するまで時効は完成しないと規定して時効の「完成猶予」を認め、判例の「裁判上の催告」の考え方を条文の中に取り込みました。
また、確定判決などによって権利が確定したときは、時効は中段事由が終了したときから新たな進行を始めると時効の「更新」を定めました(第147条)。
さらに、天災などの障害事由に基づく時効の「停止」については、旧法下では当該障害事由が消滅してから2週間の「停止」を認めていましたが、震災の経験を踏まえ、改正法では3カ月間の「完成猶予」が認められることになりました(161条)。以上
(2020.12)