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『改正民法の要点(7)』
政府は、1月22日、拡大する新型コロナ感染への対策を強化するため、特措法や感染症法等の改正案を閣議決定しました。
特措法の改正案では、飲食店等が知事の営業時間の短縮や休業命令に従わない場合、30万円~50万円以下の過料を科されることになります。また、感染症法の改正案では、入院を拒否したり、入院先から脱走したりした者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、保健所の調査に回答しなかった者も50万円以下の罰金に処されます。通常国会での議論が注目されるところです。
さて、改正民法の「時効」の3回目は、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間の特則と、長期20年の期間制限の見直しです。
旧民法724条では、不法行為に基づく損害賠償請求権は被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年で時効消滅し、また、不法行為の時から20年で消滅すると規定されていました。
しかし、例えば、交通事故で死亡した被害者の相続人の加害者に対する損害賠償請求権のように、人の生命・身体は財産よりも重要な法益ですから、損害賠償請求権の行使機会を十分に確保する必要があります。そこで改正法は、かかる請求権の消滅時効期間を上記3年から5年に延長することにしました(民法724条の2)。
また、上記20年とは、従前、時効期間ではなく除斥期間であり、期間の経過により当然に権利は消滅するものと理解されていました。従って、中断や停止は認められず、援用しなくても当然に認定されるので、援用に関する信義則違反や権利濫用の主張も困難でした。
しかし、例えば、交通事故がひき逃げ事件の場合、加害者が見つからなくても事故の時から20年で加害者の損害賠償債務は消滅してしまいます。
これでは正義・公平の理念に反するので、改正法は、上記20年についても「時効で消滅する」と定めました。
さらに、人の生命・身体の侵害は、交通事故のような不法行為だけでなく、労働契約上の安全配慮義務違反や、医療過誤のような債務不履行でも発生します。
改正法は、債権の消滅時効期間について、権利行使できる時から10年、権利行使できることを知った時から5年と規定していますが(166条1項)、上記10年の特例として、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、権利行使できる時から20年で時効消滅するものと定めました(167条)。
ただし、改正法の知った時から5年はそのままなので、旧法の債権の消滅時効期間10年より短期化されているので注意が必要です。以上
(2021.02)