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『改正民法の要点(8)』
2月3日、新型コロナウイルス対策特別措置法、感染症法及び検疫法などの改正法が成立し、2月13日から施行されています。
前回ご紹介したとおり、これらの政府案では違反者に対する刑事罰が予定されていました。
しかし、国会審議を経て、これらの法律のうち、改正特措法では、命令に応じない事業者に20万円~30万円以下の過料、改正感染症法では、入院・調査に応じない者に30万円~50万円以下の過料という行政罰を科すことで決着しました。ただし、改正検疫法では、海外からの入国者が施設停留措置に従わない場合1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、こちらは刑事罰が維持されています。
さて、これまで3回にわたって改正民法の「消滅時効」についてご説明してきましたが、今回は、改正民法の「法定利率」です。
法定利率とは、利息を支払うべき債務について、約定利率がない場合の利息の算定に用いられます。例えば、利率の定めを欠く利息付金銭消費貸借、交通事故の損害賠償の遅延損害金、逸失利益などの損害賠償額を定める際の中間利息控除などにおいて利用されています。
旧民法404条は民事債権の法定利率を年5%、旧商法514条は商事債権の法定利率を年6%と定めていました。
しかし、これらの法定利率は、明治期の制定以来一度も見直されていません。現在は市中金利を大きく上回っておりますし、経済社会の発展によって、民事と商事を峻別する必要性も乏しくなっています。
また、当事者の合意に基づく利率よりも、合意に基づかない利息や遅延損害金の利率の方が高くなるという状況自体にも違和感があります。
さらに、中間利息控除の場面では、高い法定利率が賠償額を抑える方向に働くので、被害者救済の観点からは問題であると指摘されていました。
そこで、今回の民法改正で法定利率を見直すことになったのです。ただし、現時点である利率を定めても、将来、市中金利と乖離すれば、再び法定利率を改正する必要があるので、合理的な変動制の仕組みを定めることになりました。
すなわち、改正民法は、法定利率を年3%と定めました(404条2項)。
また、法定利率は3年を1期として、1期毎に短期約定貸出利率の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合に1%刻みの数値で変動させることになりました(同条3~5項)。
つまり、改正民法は、法定利率を市中金利の変動に合わせて穏やかに上下させる変動制を採用した訳です。また、商事法定利率は廃止され、上記法定利率に一本化されました。以上
(2021.03)