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『改正民法の要点(9)』

 令和3年3月21日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が全都道府県でようやく解除されました。
 ところが、宣言解除後も、全国的に感染は拡大し、同月29日、東京都が特措法に基づく時短命令に従わなかった店舗に対し過料を科す方針を明らかにしました。
 また、大阪府も「まん延防止等重点措置」(まん防)の適用を政府に要請するとのことです。まん防とは、特措法に基づく新しい制度で、緊急事態宣言が出されていなくても、まん防の適用を受けた都道府県の知事は、市町村単位で飲食店等に対し、営業時間の短縮等を命じることができ、命令違反に対しては20万円以下の過料を科すという内容です。
 さて、今回から改正民法の「約款」についてご説明致します。約款とは、例えば水道・電気・ガス等の供給契約、鉄道・バス等の運送契約、銀行・保険・インターネット等の利用契約のように、事業者と顧客が大量・画一的な取引を行う場合に締結される契約のことです。
 旧法に約款に関する明文の規定はなく、個々の契約解釈の問題として処理されてきました。
 しかし、約款といっても内容は千差万別である上、民法の原則によれば、当事者が契約内容を理解していなければ、本来契約には拘束されないはずです。
 しかし、約款を作成した事業者の担当者でもない限り、約款の規定の隅々まで理解している人は(ほとんど)いないと思われます。また、約款の内容が合理的である限り、当事者の認識にかかわらず約款の拘束力は認められるべきだと考えられています。
 他方で、約款と称して約款の相手方である顧客に一方的に不利益を課す条項が混入している場合は、その条項の効力を否定する必要があります。
 これらの考慮を踏まえ、改正民法は、約款に関する規律を新たに整備することにしました。
 まず、民法第548条の2第1項は、ある特定の者が、不特定多数の者を相手方とする取引であって、その内容の全部又は一部を画一化することが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と規定し、定型取引において、契約内容にすることを目的として、その特定の者により準備された条項を「定型約款」と定義しています。
 そして、定型約款の条項が個別契約の内容となる要件として、①定型約款を契約内容とする旨の合意がある場合だけでなく、②定型約款を契約の内容とする旨を予め相手方に表示していた場合も挙げています。
 他方で、同条第2項は、定型約款の条項のうち、社会通念上、相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意しなかったものとみなすことを明文化しています。
 さらに、第548条の3は、事業者と顧客が定型取引を行う旨合意する際に、顧客から定型約款の内容を示すよう請求された場合、事業者は遅滞なく相当な方法でその内容を示さなければならず、正当な理由なくその請求を拒んだ時は、定型約款の内容は契約内容とはならないと規定しています。以上
 
 

(2021.04)

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