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『改正民法の要点(12)』
政府は新型コロナ対策として9都道府県に発令していた緊急事態宣言を6月20日に解除しましたが、そのうち7都道府県については7月11日まで蔓延防止措置に移行しました。
東京オリンピックの開催まであと1カ月を切り、感染の速やかな沈静化が望まれます。
さて、今回は改正民法の「契約不適合責任」についてご説明致します。
旧民法は「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」、買主は契約の解除又は損害賠償請求をすることができると定めていました(旧570条)。
これは、売買契約の売主が隠れた瑕疵のある物を買主に給付した場合、それが種類物(物の種類・数量・品質に着目し個性を問わない場合。例えば文房具や衣料品等の消費財)の売買であるときは、売主に債務不履行責任が生じ、売主は瑕疵のない物を給付する義務を負うことになります。具体的には代替物を給付したり、給付した物を修補したりすることになります。ところが、特定物(物の個性に着目する場合。例えば絵画等の美術品や不動産)の売買であれば、売主は当該特定物を給付すれば、契約の履行として足りるので、債務不履行責任を負うことにはならないのです。
しかし、当該特定物に瑕疵がある場合買主にとって不利益であることは明らかなので、法律が買主を保護するため特に売主の瑕疵担保責任を定めていると理解されてきました(法定責任説)。すなわち、民法上の瑕疵担保責任とは、特定物売買において目的物に瑕疵がある場合に法律によって特別に認められるものであり、買主には契約解除権と損害賠償請求権は認められていますが、追完請求権は認められていないのです。
しかし、現代社会では、売買の目的物のほとんどが大量生産されており、目的物に何らかの不具合があれば、代替物を給付したり、修理したりして、履行を追完することが容易なのです。つまり、特定物売買と種類物売買を場合分けして瑕疵担保責任と債務不履行責任の適用範囲を峻別する必要性は乏しいと理解されるようになってきました(契約責任説)。
そこで、改正民法は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」(新562条第1項)、この場合において「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」(新563条第1項)と定めました。
要するに、新法では、特定物売買であるか不特定物売買であるかを問わず、種類、品質及び数量に関して契約の内容に適合しない目的物の引渡しを受けた場合、買主には契約解除権や損害賠償請求権(新564条)だけでなく、追完請求権や代金減額請求権が認められることになったのです。以上
(2021.07)