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『改正民法の要点(14)』

 10月に入り、新型コロナの感染者数が激減しています。今月25日には東京都と近隣3県並びに大阪府における飲食店に対する営業自粛要請も解除され、通常営業が可能となりました。
 感染者数が激減している理由ははっきりしませんが、昨年の今ごろも、多くの国民がGoToキャンペーンを利用して旅行したり飲食したりしていました。その結果かどうかはともかく、やがて年末年始の第3波を迎えたことを忘れてはならないと思います。
 さて、今回は改正民法の「連帯債務」についてご説明します。
 例えば、友人3人が飲食店を共同で開業するための資金として300万円調達する場合を考えてみます。もちろん、各自がバラバラに100万円ずつ借りてくることもできますが、300万円まとめて貸してくれる相手がいるなら、各自が300万円全額を返済する債務を負担しつつ、そのうちの一人が返済すれば、他の債務者も債務を免れるという法律関係を構成することも可能です。この法律関係を連帯債務といいます。
 連帯債務は多数当事者間の特殊な関係なので、上記の弁済以外にも、一人の債務者に生じた事由が、他の債務者の負担する債務に影響を及ぼすかどうかが問題となります。
 旧民法は、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる(旧434条)、連帯債務者の一人についての免除や消滅時効の完成は、その連帯債務者の負担部分(上記の例では原則3分の1)について他の連帯債務者にも効力が生じる(旧437条、旧439条)と規定し、いわゆる連帯債務の絶対的効力事由を定めていました。
 しかし、このような絶対的効力については、例えば、連帯債務者の一人に対する履行の請求があっても、他の連帯債務者は当然には請求された事実を知らないため、いつの間にか履行遅滞に陥っている場合があり得ます。
 また、債権者が一人の連帯債務者に対して免除すると、他の連帯債務者に対して請求できる金額が減少することになるので、債権者の意思に沿わない結果になる可能性があります。
 さらに、債権者としては、連帯債務者のうちの特定の債務者から履行を受ければよいと考えていたとしても、全ての連帯債務者との間で消滅時効の完成を阻止しなければならないといった問題があります。
 そこで、改正民法は、連帯債務の絶対的効力事由を大幅に減らし、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対して効力を生じないものとしました。また、連帯債務者の一人に関する免除や消滅時効の完成も、他の連帯債務者には効力が生じないことになりました(441条)。
 ただし、債権者と連帯債務者の間で、他の連帯債務者に生じた履行の請求、免除、消滅時効の完成等の相対的効力事由が、当該連帯債務者に対しても効力が生じるとの別段の合意をしている場合は、その合意が優先します(441条但し書)。以上
 

(2021.11)

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