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『改正民法の要点(15)』
オミクロン株の猛威により、東京都の新規感染者数は1日2万人を超えましたが、ここ数日間はやや頭打ちになっています。岸田首相もようやくワクチン接種1日100万回を目指すと表明するに至りました。
他方で、世界各地でコロナ規制と権利の衝突問題が先鋭化しています。カナダでは、ワクチン義務化に反対するトラック運転手による国境封鎖が発生し、我国でも、東京都の時短命令に対して、飲食チェーン店が原告となって東京地裁で争っています。
さて、今回は、改正民法の「債権譲渡」についてご説明します。
債権譲渡とは、債権者の債務者に対する債権を、債権者と譲受人間の売買により、譲受人の債務者に対する債権にすることです。
債権譲渡によって、債権者は弁済期前に債権を金銭化することができます。また、債権者が金融機関から融資を受ける際に、債務者に対する債権を譲渡担保として提供することにより融資を受けることができます。
債権譲渡は債権者と譲受人の合意だけで成立します。ただし、債務者が弁済の相手方を債権者だけに固定したい場合、旧法下では「譲渡禁止特約」を設けて、債務者の承諾がない限り債権譲渡を無効とすることができました(旧466条)。もっとも、例外的に、譲受人がかかる特約の存在を知らない場合、債権譲渡は有効になる旨規定されていました(同条但し書)。
しかし、金融市場が発展して、債権を譲渡したり譲渡担保に供したりする場面が多くなってくると、債権譲渡の必要性の方が、債務者の債権者を固定したいという要請よりも重要と解されるようになりました。特に、譲渡が無効になるリスクがゼロではないという理由から、譲渡される債権の価値が減額評価される問題が指摘されていました。
そこで、新法では、譲渡を制限する特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられないと規定されました(466条第2項。預貯金債権は除きます。)。
他方で、債務者を保護するため、譲受人がかかる特約の存在を知り又は重大な過失により知らなかった場合、債務者は譲受人への支払を拒むことができ、また、譲渡人に対する弁済その他の事由により譲受人に対抗できることになりました(同条第3項)。また、債務者は、特約付債権が譲渡された場合、供託できるようになりました(466条の2)。
さらに、譲受人を保護するため、譲受人が債務者に対して相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、期間内に債務者が履行しないとき、譲受人は自己に履行するよう請求できます(同条第4項)。譲渡人が破産したときも、譲受人は債務者に対して債権全額を供託するよう請求できます(466条の3)。
以上
(2022.03)