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『最高裁裁判官の国民審査(2)』
5月25日、最高裁判所の大法廷は、海外の日本人に投票権を与えていない「最高裁判所裁判官国民審査法」(以下「国民審査法」)に対して違憲判決を下しました。既存の法律を憲法違反と認定する判決は珍しく、戦後11例目と言われています。
最高裁の裁判官は、憲法79条2項により、任命後初めて行われる総選挙に際して国民審査に付され、その後10年毎に同様の審査を受けます。その具体的な方法は国民審査法に規定されていますが、現行法は海外在住の日本人に投票権を認めていません。
しかし、国政選挙については、2005年に、海外在住の日本人の投票権を比例代表選挙に限定していた当時の公職選挙法が、最高裁により憲法違反と認定され、選挙区選挙も投票できるように改正されていました。
そこで、海外に居住している日本人は国政選挙で投票できるのに国民審査の投票ができないのは憲法違反であるとの理由から訴訟が提起されていました。
これに対して、国側は、国民投票と民主主義の根幹をなす選挙とは位置付けが異なり不可欠な制度ではないし、短期間に世界中の国々で手続きを行うことは技術的にも難しい等と反論してきました。
最高裁は「憲法は、選挙権と同様に国民審査の権利を平等に保障しており、権利を制限することは原則として許されない…現在とは異なる投票用紙や方法を採用する余地もある。審査の公正を確保しつつ、投票を可能とするための立法措置が著しく困難とはいえず、やむを得ない事情があるとは到底いえない」と判断しました。
また、以前ご紹介したとおり、国民審査とは罷免したい最高裁裁判官を「解職」する制度なので、現行法では投票用紙の対象者欄に×印をつけ、その×印が過半数を超えたときに解職される仕組みになっています。この点についても、宇賀最高裁裁判官は、補足意見として「名前に×をつける現在のやり方以外の投票方法も選択肢となりうることや、情報通信技術が急速に発展して、国際的な通信にかかる時間や、情報の質、量も飛躍的に向上していることを考えると海外での投票を一律に認めないやむを得ない事情があるとはいえない」と付言しています。
なお、我が国の最高裁判所は、一部の外国にあるような、いわゆる憲法裁判所ではないため、最高裁判所が法令違憲判決を下しても、直ちに現行の国民審査法が無効となるわけではありません。現行法を憲法に沿った内容とするためには国会で改正する必要があるのです。
現行の国民審査法を具体的にどのように改正するのか、今後の国会審議が待たれるところです。以上
(2022.06)